第51話 尿道カテーテルを抜き自力でトイレへ

第51話 尿道カテーテルを抜き自力でトイレへ

尿道のカテーテルを今日抜くか抜かないかで

ボクは一瞬考えたが、今日抜くことを選択し

た。

身体から抜ける管は早く抜いて自由の身に

なりたいという気持ちがあったからなのだが、

言ったすぐ後で少し後悔した。

というのも、ボクは手術当日、麻酔科医の

言っていた言葉を思い出したからだ。

「ヒロ田さん、痛いことは麻酔効いてから

やりますから…」という言葉。

改めて自分の身体を見てみると、手の甲には

点滴の針が入っている。

しかも採血とかで使うような針よりも太い

針で、麻酔が効いてない時に刺されたら、

けっこう痛そうだ。

お腹にも管が入っている。

そして尿道にもオシッコが勝手に出てくる

ようにカテーテルが入っている。

どれも麻酔効いてない時にされると、かなり

痛いことが想像できる。

『尿道に入ってるカテーテルを抜くって

ホント痛くないんだろうか…?』

『何より、尿道に入ってるカテーテルを抜く

ことで、絶対にトイレに行かないとダメだ』

『1回トイレに歩いて行っただけで、すぐに

抜いても大丈夫か?』

今日抜くと言った後で急に不安になってきた。

しかし看護師さんは手袋をはめたり、袋など

カテーテルを抜くための準備をしている。

もうOKを出してしまったんだ。

腹をくくろう。

看護師「それじゃヒロ田さん抜きますね」

ヒロ田「はい」

そう言われたとき、ちょっと力が入った。

『おっ、看護師さんが言ってたように

痛くないぞ』

確かに抜くときニュルっというくすぐったい

というのか何とも言えない感じがしたのだが、

でも全く痛くないし嫌な気持ちもしない。

ヒロ田「あれ?終わったんですか?」

看護師「はい、終わりましたよー。

もうこれでトイレは絶対行かないとダメなの

で頑張って歩いてくださいね」

ヒロ田「わかりました。頑張ります。

それにしても痛くなくて良かったです。

痛かったら嫌だなーと思ってたので…」

看護師「あー、そうですよねー。入れた時、

カテーテルを風船のように膨らませて、動か

ないようにしてるんですよ。それで抜く時は

その空気を抜いてから細くして抜くので痛く

はないと思うんですよね」

ヒロ田「へぇー、そういう仕組みなんですね」

とにかく痛いのは嫌だっただけに、終わった

時はホッとした。

こうしてボクの身体から管が1つずつ無くな

っていくと、身軽になってきたというか、

気持ちが楽になってきた。

だが、尿道のカテーテルを抜いたことで、

嫌でも…、痛いと思っても寝たままでは

いられない。

オシッコがしたくなってきたら、絶対に

起き上がってトイレに向かうしかないのだ。

手術後は、まったく気にしたことがなかった

尿意だったが、カテーテルを抜いてしばらく

すると何となくトイレに行きたい感覚になっ

てきた。

『あー、これが今までは勝手にカテーテル

から出るようになっていたんだ…。

凄いな~カテーテル』

しかし、そう感心もしてられない。

漏らすわけにはいかないから、したいと

思った時に行かなければ…。

ボクはさっきベッドから起き上がった要領で

括り付けてるヒモを使い起き上がる。

何とか座るところまでもっていく。

そして点滴スタンドを杖代わりにして

起き上がる。

立ったはいいが、相変わらず最敬礼の

スタイルだ。

背中をまっすぐ伸ばすことができない。

ボクは点滴スタンドを前にして、最敬礼

スタイルで歩き出した。

トイレに行くまでにナースステーションが

ある。

そこの前はどうしても通らなければいけない。

「あー、ヒロ田さん早速歩いてるねー。

その調子で頑張ってね」

『いやいや早速歩いてるんじゃなくて…、

オシッコしたいから仕方なく歩いてる

だけなんだけど…』

ボクは苦笑いしながら心の中でそう思った。

『カテーテル抜くの早かったかな…』

歩きながらそう考えもしたが、もし抜いて

いなければ、きっとベッドに寝たままで

起き上がって歩くということはなかった

ようにも思う。

そう考えれば抜いて良かったのか…。

そんなことを思いながら歩いているとトイレ

に着いた。

『あー、そういえば看護師さんがカテーテル

抜いて初めてオシッコするとき、血が混じっ

てるかもしれないと言ってたなー…』

その言葉を思い出し、ちょっぴり気になって

きた。

恐る恐る用を足す。

『おっ、大丈夫だ!血も混じってないし、

出づらくもない』

1つクリアできた感じがして嬉しくなった。

用を足し終えたボクは、すぐに病室へ。

テレビを見ながらベッドで横になる。

『癒着しないかー』

テレビを見ていると、頭の中にその言葉が

木霊する。

医師も言っていたけれど、看護師さんは特に

しつこいくらい【癒着】のことを言っていた。

【歩かないと癒着する可能性大】だと…。

『いったいどれくらい歩けばいいんだ?』

ボクは疑問に思った。

『看護師さんが来たら聞いてみよう』

自分ではわからないのだから、歩く基準を

聞いてみようと考えた。

しかし、看護師さんが来るのは、朝の血圧や

検温、医師の回診や日中や夜の血圧、検温

くらいなもので、ほとんどボクの病室には

来なくなった。

『まず歩くか…』

【癒着】が気になったボクは、とにかく聞く

前に歩いておこうと考えた。

そして起き上がり、トイレに行った時と同じ

要領で歩き始めた。

その後、看護師さんが来た時に、どれくらい

歩けばいいのか聞いてみたところ、基準は

特にないようだ。

ただ、寝てばかりいるよりも、どんどん歩く

クセをつけてくださいとのことだった。

ボクは癒着しないよう、たくさん歩くことを

このとき決断したのである。

ーつづくー

ヒロ田

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