第52話 手術後三日目に食事の話が出てきた

第52話 手術後三日目に食事の話が出てきた

歩けるようになったものの、相変わらず

最敬礼の姿勢で点滴スタンドを押しながら

歩くスタイルは変わらない。

歩き始めて二日目。

トイレに行くためナースステーションの前を

通る。

するとナースステーションからこんな声が

聞こえてきた。

「ヒロ田さん、若いのにそうやって歩いて

たら老人みたいだよ。もっと真っ直ぐな

姿勢で歩かないと!」

ボクはその言葉に苦笑いをしながらナース

ステーションを通り過ぎた。

病室に戻ってテレビを見ながら一息つく。

安静にしていると痛くは無い。

だが、起きて歩くときは痛くて真っ直ぐ

立つことができない。

看護師さんが言ってたように『若いのに

そんな恰好で歩いていたら老人みたいだよ』

と言われてもおかしくはない。

でも痛くて背筋を伸ばすなんて、この時は

どうやったってできなかった。

ゆっくり休みながらテレビを見ている

と、【癒着するかも…】という言葉が頭を

よぎる。

そうなったら起き上がり、また病院内の

廊下を歩く。

それを繰り返した。

しかし、同じ廊下を歩いていると、景色が

同じで徐々に飽きてきた。

もともとボクは歩くのが苦手だ。

苦手というか面倒になってしまうタイプ

だったから、少し歩くと飽きて病室に戻る。

ということを繰り返していた。

そこで、自身で病院内のルートを何パターン

か作り、歩数を数えることにした。

1日に何歩歩けるか?

そうやって歩くことで飽きずに歩けるように

なってきた。

ボクが入院していたのは4階。

1つ目のルートは、その4階を一回りするパタ

ーン。

2つ目のルートは、同じ4階だけれど、新館

と言って、新しい棟が隣に建っている。

旧館と新館は渡り廊下でつながってるので、

旧館から新館を一回りしてくるパターン。

3つ目のルートは、エレベーターを使い、

1階まで降りて1階をグルグル回ってから

4階を一回りするパターン。

それをやることで、歩くことが随分と楽しく

なってきた。

そんな中、手術後三日が経過した頃、食事の

話がチラホラ出てきた。

そういえばボクの主治医が『手術をしたら

ご飯を食べれるようになる』と言っていたな。

『おそらく最初は全粥からか…?』

『全粥は苦手だが、それでもご飯が食べれる

というのは楽しみだな…』

『退院するまでに、普通のご飯が食べれる

ようになるんだろうか…?

それとも五分粥くらいまでか…?』

そんなことを想像していると看護師さんが

病室に来た。

看護師「ヒロ田さん、食事のことは手術前の

病院で何か言ってましたか?」

ヒロ田「手術したら食べれるようになると

思うよ。と言ってました」

看護師「それであれば、こちらのやり方で

良いということなんですね?」

ヒロ田「はい、そうだと思います」

看護師「わかりました」

そう言って病室を後にする。

数分後、看護師さんが再び戻ってきた。

看護師「ヒロ田さん、手術前まではどうして

たんですか?」

ヒロ田「入院前はエレンタールで、狭窄が

ひどくなってからはIVHで高カロリーの

点滴です」

そう伝えた。

『いや~早ければ今日の夜からとか食事が

出るのかな~』

『きっと食事内容を決めるために、リサーチ

してるんだなー』

『ということは、また後で食事のことに

ついて説明に来るな…』

そう考えると食事が楽しみになってきた。

(コンコン)

病室のドアがノックされる。

「ヒロ田さーん、エレンタールって自宅に

行けばできるもの揃ってるんですか?」

看護師さんがドアを開けながらそう言って

きた。

ヒロ田「はい、すべて揃ってますけど…」

看護師「それってどなたか持ってきてくれる

人います?」

ヒロ田「えっ?今日ですか?」

看護師「できれば今日から始めてほしいん

ですよー」

ヒロ田「えー、どうかなー。頼める人はいな

いわけではないけど、今日からエレンタール

を始めるってことですか?」

看護師「そうなんです。食事に関しては、今

まで通りにやってもらおうということになっ

たんです」

ヒロ田「あっ、そうなんですか。わかりま

した。持ってきてもらえるか頼んでみます」

看護師「始めれるようになったら教えて

ください」

ヒロ田「わかりました」

ボクはガッカリして肩を落とした。

『全粥だとしても食事ができる』

そう勝手に想像していたボクは、大きな

ショックを受けた。

『なんで手術したのに絶食を続けないと

ダメなのか?』

『主治医は食べれるようになると言ってた

のに…』

とにかくエレンタールは手配しなければいけ

ない。

ボクはメールで持ってきてもらえるよう

お願いしながら、そんなことを考えていた。

正直、ボクは年内に退院できれば、年末年始

ゆっくりしながら食事ができる。

そう勝手に考えていた。

だからこそ手術も早くやってもらおうと

思ったし、決断もできたのだ。

しかし…

これが食べれないとなると意味がない。

いや、意味がないわけではないけれど、

自分の中での予定が大きく狂ってきた。

『何でエレンタールをしなければいけない

んだ…?』

ボクはしばらく落ち込んだのである。

ーつづくー

ヒロ田

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