次の日の日曜日。
検査もなく点滴とエレンタールのみで過ごす。
ただ今日は風呂に入る日だ。
毎日、午前か午後のどちらかで風呂に入るこ
とはできるのだが、検査があると時間によっ
ては入るのを逃したりすることもある。
そのため検査時間を気にしないで風呂の予約
ができるのは嬉しいものだ。
さらに点滴で使用している針の差し替えをす
る日でもある。
点滴の針を抜いてもらい、新しく針刺しをす
る前に風呂に入れば看護師さんに腕を保護し
てもらわなくていいし、ボクも針が無いまま
風呂に入ることができるので少しの時間、気
分的に病人から離れられる時間になる。
そして鼻のチューブも交換する日だ。
24時間鼻からチューブを入れっぱなしでエレ
ンタールをやっているのだが、定期的に交換
が必要になる。
針を抜いてもらい、鼻からチューブを抜き、
4日ぶりの風呂に入る。
1人30分以内という時間制限がある。
ボクは30分もあれば十分だと思っていた。
しかし風呂から出てきてみたら、30分ギリ
ギリだった。
普段、風呂に入ってる時間を気にしたこと
が無かったので意外と時間がかかったこと
にビックリした。
それでも久々の風呂は最高だった。
月曜日の予定は、午前中にCT検査がある。
レントゲンの一般検査で肺に影が見えるとの
ことだったので、もう少し詳しく見たいから
CT検査が必要ということだった。
CT検査は慣れているし、要領もわかっている
から不安も何もない。
これが、やったことない検査だったり、痛み
があるかもしれない検査や治療が控えている
と、もう前日から憂鬱になっている。
それがないとわかればゆっくり本を読んだり
テレビを見たりすることができる。
そして月曜日。
なんと、朝一から看護師長さんがきて、女性
患者さんの入院する部屋がないので、別の部
屋に移動をお願いしたいとのことだ。
朝から引越し。
もちろん、看護助手の方が荷物を運んでくれ
たので、楽は楽なんだけれど、一人部屋では
なくなった。
1人部屋から一転して4人部屋になった。
そうこうしているうちにCT検査に呼ばれ、
向かうもあっという間に終わり部屋に帰って
きてテレビを見たり本を読んだりする。
だけど、なんだか落ち着かない。
というのも午後から友人が見舞いに来てくれ
るからだ。
基本、ボクは見舞いに来て欲しくない。
なぜなら病人のボクを極力見せたくないから
だ。
ただ、もう20数年前からの友人なのだから
今さら恥ずかしがっても…ということで、お
見舞いに来てくれることをOKしたのである。
14時が過ぎた頃、友人が本を持って見舞い
に来てくれた。
午前中4人部屋に移動してきたため病室で話
すことができない。
(気にせず病室で話している人はいるが…)
ボクは友人とデイルームへ移動して話すこと
にした。
久々に会ったので話すことはお互いにたくさ
んある。
過去の思い出話から今の自分たちに起きてる
話までいろんな話をしていると、あっという
間に1時間30分が過ぎた。
友人が帰ることになり、下まで送ろうとエレ
ベーターに向かおうとした時、IBD専門医師
(以下IBD医師)がちょうど通りかかった。
IBD医師がボクに気づき、その場で話しかけ
てきたため、友人を下まで送ることができず、
その場でお別れをした。
IBD医師の話を聞くとこういうことだった。
「朝、CTを撮ってもらったら、肺に影があり、
結核の疑いもある。それがハッキリしない限
り、大腸の治療には入れない。
そして、申し訳ないけれど結核の疑いがある
ので、個室に移動してもらわないとダメなの
で移動をお願いします」
『えっ?結核の疑い??』
ボクは、クローン病になってから肺炎になり
やすくなった。
抵抗力がなく、熱が出やすくなったからなの
だと思うが…。
そのため肺炎で治療したことが何度かある。
そのたびに【結核の可能性あり】ということ
で痰をとって…という検査を2回ほどした。
結果的に2回とも問題はなかったが…。
今回も結核の疑いだ。
しかも隔離されることになった。
1日で二度の引越しだ。
看護師さんも看護助手さんも、「タイミング
悪くすいません」と謝ってくれたが、これば
かりは仕方ない。
想定外のことが起きたのだから…。
ただ個室への移動は有難い。
なんだかんだ1人だと気楽に過ごせるからだ。
だが面倒なことに痰を3日間(3回)取り続け
なければいけなくなった。
咳が出ていて、痰も出やすい状況ならゼンゼ
ンいいのだが、咳も出なければ、痰も出てく
る感じがしない。
この状況で痰を取れと言われても辛い状況だ。
「明日で良いので、何回かやってダメなら吸
入器を使って出しましょう」という話になっ
た。
入院して5日目。
個室で迎える朝は快適だ。
病室のドアは隔離されているからか締め切っ
ている。
ただドアに小窓がついているため入室してく
る人が見える。
朝の巡回だろう、看護師さんがドアの前に立
っているのが見えた。
すると、つけているマスクを外し、違うマス
クに付け替えてるではないか!
看護師さんがドアを開けて入ってくる。
いつも看護師さんがつけてるようなマスクで
はなく、工事現場で使うような防塵マスクの
ようなものだ。
これは正直ガッカリした。
いや、しょうがないことなんだろうけども、
何だか一人ぼっちになってしまった気分に
なり、寂しい気持ちになったのである。
ーつづくー
ヒロ田