入院からストーマ手術前

入院からストーマ手術前

2016年4月28日11時40分。

「ヒロ田さん、オペ室から呼ばれましたので

これから一緒に向かいましょう」

とうとうストーマ手術する日が来たんだ。

ボクは何度もトイレに通う辛い日々と

やっとお別れする日が来た。

手術の一ヶ月と一週間前の3月23日。

ボクは、ストーマ手術をするために入院した。

入院する一週間前は本当にきつかった。

とにかく横になっていたい状態。

しかし、そんなこととは関係なく

トイレに行きたくなる。。。

ストーマ手術が待ち遠しかった。

考えてみると、ストーマ(人工肛門)に

なるという決断をする前までが、一番

気持ち的にはきつかったかもしれない。

決断すると、早く手術をしたいという

気持ちに変わっていたのだから。。。

1日40回以上便意を催すということに

疲れていたこともあるかもしれないが…。

入院する病棟は消化器内科。

病室に入り病衣に着替えて待つ。

身長、体重、心電図、採血等…

一通りやってから点滴がスタートだ。

点滴になってトイレの回数が減ってくれると

有難いのだが、これまた今までと同じように

トイレの回数は減らない。

ベッドで横になっていたいというのに…。

採血結果が出たころ、医師がやってきた。

「ヒロ田さん、栄養状態悪すぎ。

これはフラフラするわ~」

S-アルブミンという項目があるのだが、

4.0が正常値。

それがボクの場合は1.4だから

栄養がゼンゼン取れてない。

このままの状態では手術もできないから

何とかアルブミンを上げて手術できるように

しないとダメだとのこと。

ボクは、もう明日にでも手術したい

気持ちでいっぱいなのだが、

できないのであれば仕方がない。

そう思っていた。

なぜなら一週間から十日後くらいには

遅くても手術ができると思っていたから。。。

しかし、実際手術ができたのは、入院から

一ヶ月と一週間が経った4月28日だ。

入院してから手術までの間は、

外科の医師と打合せをするために、

いろんな検査が待っている。

ボクの場合はクローン病だから

大腸カメラはもちろんのこと、

小腸バリウム(正確には小腸X線検査

というのか…)、胃カメラ、CTやMRI、

そういった検査をやるんだから最短でも

一週間くらいか、もしくは十日後くらいか。。。

早く手術をしたかったボクは、

医師に聞いてみた。

しかし、それは時間的に難しい。

早くても二週間後くらいだと思うとのことだった。

ただ、そんな話も次の日には消え去った。

外科の医師が、今の状態では体力が無さ過ぎて

手術ができないと言っている。

なので、もう少し栄養状態を良くしないと。。。

そんなことで高カロリーの点滴をすることになった。

高カロリーの点滴は、腕の血管からは入れれない。

首の太い血管にカテーテルを入れての点滴だ。

それと同時に、アルブミン製剤を1日に一回

やっていくとのことだった。

その後、採血は一日おきに採って状態をチェック。

順調だった。

しかし、、、

高カロリー点滴をスタートして5日目に

高熱が出てきた。

感染症だ。

血管にカテーテルを入れてると、

ずっと入れっぱなしだからか

感染症を発症しやすいようだ。

二週間後の手術はダメだったが、

三週間後の手術はいけるかもしれない

状況だったのに、熱が出たら手術はできないと。。。

振出しに戻った。

首からカテーテルを外し、腕から普通の点滴。

カロリーは摂れないが熱を下げることが先決だった。

幸いなことに3日くらいで熱が下がった。

何とか四週間後に手術ができることを期待しよう。

熱が下がって2日目。

やはり手術する前までにある程度の体力回復を

望んでいると外科の医師が言っているようだ。

そこで、今度は鎖骨下からカテーテルを入れて

高カロリーの点滴をしていこうということになった。

また局所麻酔してカテーテル入れるのか…。

ちょっと憂鬱になったが手術のためだと思って

前向きに考えた。

小学生のころ、遠足や修学旅行のような

イベントがあると、ずいぶん前から楽しみで、

だけど雨降ったりしないかちょっと心配で…。

そんな気分になったことを思い出した。

そして、このストーマ手術前の入院期間は

まさにそんな気分だった。

二回目のカテーテル導入、そして高カロリー点滴で

栄養状態が良くなり、入院してから四週間後には

何とか手術できるようにしたい。

そう思っていた。

だが、、、

今度は、カテーテルの先に血栓ができてる

ことが判明した。

その血栓を溶かさないと、手術どころか

血管のどこかで詰まると危険だ。

とのことで、今度は24時間かけて

血栓を溶かす点滴がスタートした。

血栓が無くなったかどうか確認できるまで

それがずっと続く。

その間もトイレの回数は入院前と変わらず。

いよいよ精神的にも参ってきた。

5月のゴールデンウィークに手術なんか

しないだろうから、4月28日までに

手術ができないとなるとゴールデンウィーク

明けになってしまうことは想像できた。

さすがにそれまで今の状態が続くと辛い。。。

4月21日。

ボクはCT検査室に呼ばれた。

血栓が無くなっているかどうかの

最終チェックだ。

どうやら血栓は無くなっているようだった。

よし、これで手術できる確率が高まった。

ストーマ手術に向けて準備が始まっていく。

WOCという皮膚・排泄ケア認定看護師さん

がいて、その人と打ち合わせをする。

最初のころにも確認したのだが、

最後にもう一度確認した。

皮膚トラブルがあった時なども

問題ないかどうかなど。。。

いろんなストーマの方をケアしているだけに

皮膚トラブルの解決とかに自信が

あるようだったので安心した。

4月26日。

手術の2日前の午前中。

ボクは消化器内科から外科に転科した。

転科した午後に、再びWOCの

看護師さんと会う。

今度は、手術するときに、どの位置に

ストーマをつけるか、予めマーキングを

するとのことだった。

ボクは大腸全摘手術をするので、

小腸ストーマ(イレオストミー)の

マーキングだ。

ボクとしては下着の中に入るくらいの

位置にストーマを作ることはできないのか?

と聞いてみたのだが、ある程度筋肉がないと

つけれないとのことだ。

結局、ボクはへそから5cmくらい横に

ずれた場所にマーキングとなった。

手術の前日は、昼には点滴も止め、

水飲みOKで、あとは何も取らないように

とのことだった。

まぁ、ずっと絶食だったし食べてもいないから

水分もそんなに欲しくなかったので

ゼンゼン問題なかった。

午後からは、シャワーを浴びて身体を綺麗にする。

やっとここまできたか。。。

身体を洗いながら、自分の肛門様に

『今まで頑張ってくれてありがとう!

辛い思いをさせて申し訳ない』

そう心の中で叫んだ。

ストーマ(人工肛門)になることを

考えてもいなかった。

そして、実際にストーマ(人工肛門)を

勧められた時も、頑なに拒否をした。

だけど、どんどん体調が悪くなっていき、

負担をかけ続けてきた自分の肛門様が

悲鳴をあげた。

『もう勘弁して…』と。。。

シャワーを浴びてから、ボクはとても

気持ちが高ぶっていた。

あの小学生の時に味わった遠足の前日の気分だ。

夜もトイレの回数は相変わらず多かったが、

この日だけは許せる自分がいた。

そして2016年4月28日。

いよいよ手術の時が来た。

ヒロ田

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