第161話 ストーマ手術のための入院三十日目は外科への転科の話

第161話 ストーマ手術のための入院三十日目は外科への転科の話

2016年4月19日火曜日、入院して二十八日目の朝がきた。

昨日の夜、IVH用のカテーテルが左腕から抜けた。

これで点滴は末梢からのみとなった。

ヘパリンも一緒にやっているが、とりあえず感染するリスクは最小限になったので

良しとしよう。

手術まで本当にやることは無くなった。

もちろん先生が朝の回診は来るし、看護師さんも点滴を定期的に見に来たりする。

ただ、それ以外は何もない。

忙しいのはトイレ通いだけだ。

時間がたっぷりあるのだから、こういう時こそ時間を有効に使えばいいのだが、

頭がうまく働かない。

ボーッとテレビを見ながらトイレに行きたくなったらトイレに行くという

ことしかできない状態なのだ。

ベッドから起き上がるとしたらトイレと歯磨きや洗顔、シャワーくらいなもので

暇だから院内を散歩…なんてことは思いもしなかった。

いや、思いはしたけれど行動に移すことができなかったのだ。

2016年4月21日木曜日、入院して三十日目だ。

『本当は今日が手術日だったんだよな…』

朝起きてそんなことを思う。

というのも血栓ができなかったら4月21日の今日が手術日だったからだ。

だがそんなことを今さら言ってもしょうがない。

いつものようにIBDチームの医師が朝の回診に来た。

主治医「今日の夜、外科の先生と最終打ち合わせするからー」

ヒロ田「あっ、じゃあ明日には28日に手術するか延期になるかわかるんですね?」

主治医「いや、手術は28日でやる方向だよ。よっぽどなことがない限り急に変更に

なるってことはもうないわー」

ヒロ田「そうなんですかね?とりあえず明日の結果報告まで待ちますけど…」

主治医「うん、手術は28日大丈夫だと思うけどね」

ヒロ田「あっ、夜に打ち合わせってことはCT撮りに行かなきゃいけないですね?」

主治医「いや、今日は大丈夫だわー。もしかしたら来週のどこかで手術する前に

CT撮ってってなるかもしれないけど…」

ヒロ田「あー、それじゃ今日は何もないってことでいいんですね」

主治医「うんそうだね。それで今後の流れなんだけど、手術の2~3日前に内科を

退院して外科に入院する形になるからー」

ヒロ田「あー、移動ですね」

主治医「うん、移動だけど全部やってくれるから歩いて外科に行けばいいだけ

だからー」

ヒロ田「わかりました」

『主治医は手術を28日にやる方向だと言っていたな』

『これで明日になって延びたなんてことになったら嫌だから油断はできないぞ…』

『もう早いとこ決定してほしいなー』

主治医は28日でやる方向だと言ってても、外科の先生が最終的に決めるのだから

夜の打ち合わせでどうなるかだ。

14時頃、珍しくIBDチームの木田先生が病室に来た。

『あれ、なんだこの時間に…』

木田先生「ヒロ田さん、ステロイドって今までどれくらい使ってました?」

ヒロ田「えっ?ステロイドですか?いやー、今までって言うと?」

木田先生「クローン病になってから今日まででどのくらい使ってたか覚えてます?」

ヒロ田「あー、それだったらここの病院に来る前に、三ヶ月くらい診てくれた

先生がクローン病をバッチリ治すからとか言ってステロイドを飲まされました

けど、結果的に合わなくて一ヶ月くらいで中止しましたし、その前のクローン病

発見時から12年くらい診てくれてた当時の主治医はステロイドは良くないと言って

使わなかった先生なので、多く使ったと言ったらここの病院に来る前の病院だけですねー」

木田先生「あー、それはヒロ田さん良い先生にあたりましたよー」

ヒロ田「えっ?どういうことです?」

木田先生「いや、やっぱりステロイドってずっと使ってると良くはないので…。

それを使わなかったのは良い先生にあたったなーと思いまして…」

ヒロ田「あー、そうですねー、ホント良い先生でした」

木田先生「そう思います。じゃあ外科の先生にはほとんど使ってないって伝えておきますね」

ヒロ田「あっ、外科の先生?」

木田先生「そうなんですよー。外科の先生がステロイドをどれくらい使ってる

人なんだろう?って聞いてきたので、そういえば過去どれくらい使ってるか聞いてなかったな

と思いまして聞きに来たんです」

ヒロ田「あっ、そうだったんですかー。そんな外科の先生が気にするくらいステロイドって

悪いんですか?」

木田先生「うーん、ここぞって言う時には使ってもいいと思うんですけど、長く使ってると

今回みたいに手術するときなんかは傷口が治りにくかったりするみたいで外科の先生が嫌が

るんですよねー」

ヒロ田「そうなんですねー。ステロイドは使ってないから大丈夫です」

ボクは幸いなことにステロイドをそんなに使ったことがない。

というより一番最初の主治医がステロイドを処方しなかったのだ。

『木田先生も良い先生にあたりましたねと言ってるということは、

あの先生(一番最初の主治医)やはり良い先生だったんだだなー。

元気にしてるのかなー…』

『木田先生は手術のこと特に言ってなかったけど、外科の先生が聞きたいって

なんだろうな…』

『でもステロイドそんなに使ってないんだから悪い話ではないよな…』

気づけば時計は18時になっていた。

周りの患者さん達は晩御飯を食べている。

『今ごろ打ち合わせしているのか?』

『どんな話になってる?』

『主治医じゃなくてもIBDチームの医師が、打ち合わせ後に結果を伝えに来てくれ

ないかな…』

ボクはテレビを見ながらそんなことばかりを考えている。

そうこうしているうちに消灯時間になった。

『あー、やっぱり来るわけないよな…』

『手術が決定したかしないかだけでいいから聞きたかったな…』

『さすがにこの時間には来るわけないな…』

こんな時というのは時間が長く感じるものだ。

明日の回診まで待っていれば結果を聞くことができる。

だが、その明日の回診までが長く感じていたのである。

ーつづくー

ヒロ田

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