第83話 痔ろう手術後なのに膿が溜まってるぞ…

第83話 痔ろう手術後なのに膿が溜まってるぞ…

『痔ろう手術後のトイレは嫌だな…』

そうは思っても、漏らすわけにはいかない。

ベッドから起き上がりトイレへと向かう。

トイレに入り、お尻を覆っているガーゼなど

を剥がし便座へ。

傷口がヒリヒリ痛むかと思ったらそうでもな

い。

『ウォッシュレットを使ったときか痛むのは

…?』

そう思いながら恐る恐るウォッシュレットの

水圧を一番弱くして洗浄してみる。

『あれ?大丈夫だ。痛くない』

手術後、初のトイレは痛くなく、無事トイレ

が終わったことにホッとした。

トイレから出て下着に快適パット(大人の

おむつにつけるもの)をつけ、その上から

病院で支給されたガーゼをあてる。

そのまま下着をあげればいいのだが、人間と

いうのは欲深いものだ。

トイレで痛くなかったこともあるし、手術が

終わって安心したこともあって、急にボクは

手術した箇所をチェックしてみたくなった。

鏡を手に取り、手術したであろう箇所を見て

みる。

『あー、ここにゴムを通したんだな。』

『あれ?何でこんなとこにもゴムが入ってる

んだ?』

『あれ?陰膿のところはゴムが入ってないけ

ど…』

『うわ、ここは凄く切ってるなー』

『あれ?なんだ?二箇所が血糊のようになっ

てるぞ?しかもけっこう傷口が広いな…。

触りたいけど痛かったら困るから止めといた

ほうがいいな…』

そんなことを1人思いながら一通りチェック

していると…

『あれ?ここ切開されてないぞ!まだ膿が

溜まってる。いやいや、これ痔ろう手術成功

じゃなく失敗したんじゃないのか?』

なんと、一番膿が溜まっていると思われる箇

所(お尻の右側でちょうど座るところにあた

る部分)が切開されていない。

『あれー、何でこうなっちゃうのよー。これ

なら手術やり直しじゃないか?』

もうボクの頭の中は、裏切られた感でいっぱ

いだ。

何だかガッカリした。

落ち込みながらベッドで横になり、いろんな

ことを考えた。

『また手術することになったら退院する予定

が狂うな。ただでさえ結核の疑いで他の治療

ができないんだから…』

『ならば局所麻酔でいいから、その場で切開

してもらって排膿させるしかないんじゃない

か?』

『以前行ってた肛門科でやってもらったほう

が良かったんじゃないか?』

そんなことを考えていると、看護師さんが入

ってきた。

「どうですヒロ田さん?」

看護師「傷口は痛くないですか?」

ヒロ田「いまトイレ行ってきたんだけど、

痛くはなかったし大丈夫です」

看護師「ちょっといま傷口見てもいいですか

?」

ヒロ田「あー、いいですよ」

そう言いながらボクはベッドへ。

ヒロ田「さっき傷口を鏡で見てみたんだけど、

この辺りとこの辺りの二箇所がさー、凄く赤

くなってて血糊っぽくなってないですか?

ちょっとティッシュで触ってみようと思った

んですけど、痛くなったら困るから止めたん

ですけど…」

看護師「あー、こことここですか?」

ヒロ田「そうそう、その辺りなんですけど、

もしかして血を止めるのにガーゼかなんか入

れてあるのかなーとも思ったり…」

看護師「どうなんでしょうねー、確かに赤く

なってて血糊っぽくも見えますけどね…」

ヒロ田「後で先生来たときに聞いてみますね」

「それと、肝心な膿が溜まってるとこ切開で

きてないんですよ」

看護師「えっ?ホントですか?」

ヒロ田「これも先生きたら聞いてみるけど、

今のままだったら膿が溜まったままなので熱

も下がらないと思うんですよね」

看護師「そうなんですねー。私もどう手術し

たのかとか知らないから何とも言えないけど、

先生に言っときますね」

ヒロ田「いや、大丈夫です。先生来たとき直

接聞いてみるので。きっと先生も考えがあっ

てそうしたのかもしれないし…」

ホント、人というのは信頼関係を築くまでに

何度か疑ってしまう生き物なのかもしれない

な…。特に、会って3~4回目くらいが、その

境目なのかもしれない。

ボクは、この時ちょっぴり不信感を抱いた。

主治医が病院を異動して、ボクもその主治医

を頼って病院を変えた。

病院を変えると、クローン病や潰瘍性大腸炎

を専門に見ているIBD専門の医師(以下IBD

医師)がいて、そのIBD医師に話しを聞いて

みることになり、結果、今のIBD医師がボク

の治療をすることになったというのが今回の

痔ろう手術をしてからクローン病の治療をし

ていくことになった経緯だ。

前の病院の時は、その病院に肛門科がなかっ

たため痔ろうの治療は別の病院に行っていた。

肛門科専門の病院だ。

今の病院は肛門科もある。

なので、1つの病院で済むといえば済んでし

まう。

けれど、今回の件で『前の病院のほうが良か

ったかな…』

そう思ったりもした。

1人ベッドに横たわり、過去を振り返りなが

ら自問自答を繰り返す。

『前に行ってた肛門科の先生、やっぱり上手

かったのか?』

『このまま膿が溜まったままなら、前の肛門

科の先生に切開してもらうか?』

『でもなー、わざわざ膿の溜まってるところ

を残しておくかなー?何かの考えがあっての

ことじゃないか?』

そう自問自答を繰り返していくうちに、

自分の考えがまとまってきた。

『まず、膿の溜まってるところを見てもらい、

どうして切開しないでそうなってるのか聞こ

う。きっと先生の考えがあるはずだ。

自分ひとりで決めつけてもどうしようもない

し、夜になって医師も来ない時間だから明日

の回診時に聞こう』

ボクは痔ろう手術が終わり、これでスッキリ

してクローン病の治療に入れると思っていた

のだが、一番膿が溜まっているところの切開

はせずに、溜まったままという事実を知り、

心配事が増えてしまったのである。

ーつづくー

ヒロ田

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