第169話 ストーマ手術が終わり病室へ移動する

第169話 ストーマ手術が終わり病室へ移動する

「ヒロ田さん、お父さんとお話しされますか?」

遠くから看護師さんの声が聞こえてきた。

ヒロ田「あっ、手術終わったんですか?」

看護師「手術終わっていま病室に戻ってき

ましたよ。お父さんとお話しできますか?」

父親 「大丈夫かい?」

ヒロ田「あっ、生まれ変わってきたわー」

全員 「失笑」

ヒロ田「あれ、いま何時?」

父親 「21時30分だ」

ヒロ田「うわ、そんな時間なの?いやー遅く

まで申し訳ないね」

父親 「時間は大丈夫だ」

ヒロ田「帰り気をつけて帰って」

父親 「うん、また来る。今日はもう帰る

から」

ヒロ田「わかった。気をつけて」

目を開けることはできなかったけれど、

父親と数十秒話をしたあとまた眠りについた。

ピッ、ピッ、ピッ…

『心電図の音が遠くから聞こえる…』

『あれ、人の気配も感じるな…』

『看護師さんか…』

ヒロ田「あれ、今って何時ですか?」

看護師「いま12時過ぎたところです」

『おっ、男性の看護師さんだ…』

ヒロ田「あっ、まだそんな時間なんですね」

看護師「どうですか?吐き気とかないですか?」

ヒロ田「はい、大丈夫です」

看護師「気分悪くなったりしたら言ってくだ

さいね。ナースコール鳴らせるように近くに

置いときますから」

ヒロ田「ありがとうございます。痛くならない

かだけが気になるところですね」

看護師「もちろん痛くなってきたら痛み止めの

注射もできますし、辛くないようにしますので

心配しないでください」

ヒロ田「よろしくお願いします」

目は開けれなかったが、数十秒話してまた

意識は無くなる。

ピッ、ピッ、ピッ…

看護師「どうですかヒロ田さん、痛みとか

吐き気は無いですか?」

ボクが眠りから覚めたことに気づいたのか

看護師さんが話しかけてきた。

ヒロ田「口の中が乾いて凄いです」

看護師「水を飲むことはできないけど、口の

中をゆすぐことはできますよ」

ヒロ田「でも口の中に水含んでも吐き出す

場所が無いですよね?」

看護師「大丈夫ですよコレに吐き出してもら

えれば」

そう言って吐物容器を差し出してくれた。

ヒロ田「いろいろやってもらって申し訳ない」

看護師「いえ、ぜんぜん気にしないでください。

これが仕事ですから」

ヒロ田「ありがとうございます」

おそらく時間にして2~3分のやりとりだとは

思うが、終わった後はまた爆睡。

『あっ、また起きてしまった。いま何時頃だ

ろう…』

ガサガサ…

『あれ、起きるたびに看護師さんがいるな…』

ヒロ田「あれ、またいてくれたんですね」

看護師「そうですね、ヒロ田さん手術終わった

ばかりなので1時間に1回くらいは様子見に来て

ます」

ヒロ田「そうなんですかー。ありがとうござい

ます」

看護師「どうですか?吐き気とかないですか?」

ヒロ田「吐き気という感じなのかわからないです

けど、これ吐き気というのかな…」

看護師「吐き気止めの注射も打てますよ」

ヒロ田「じゃあ注射しておいてもらったほう

がいいですね。お願いします」

看護師「わかりました。じゃあ準備しますね」

ヒロ田「あと、口の中が凄い乾いてるんです

よね」

看護師「わかりました。うがいしましょう」

ヒロ田「ところでいま何時なんですか?」

看護師「いま3時30分になりますね」

ヒロ田「あっ、わかりました」

「なんか朝まで長い感じがしますね」

「このまま目が覚めたままだと辛いな…

(苦笑)」

看護師「あー、そうですよね。いま痛みとか

はないですか?」

ヒロ田「痛みは今のところないんですけどね、

ただこのまま目が覚めて朝まで寝れないとな

ればキツイなーと思って」

看護師「あー、でもたぶん大丈夫ですよ。手術

終わった日は皆さん朝まで寝てますので」

ヒロ田「そうですか、それならいいんですけ

ど…」

そう言っているうちにまた寝てしまった。

ガサガサ…

『あれ、看護師さんかな…』

ヒロ田「すいません、また口の中が乾いた

んですけど、うがいいいですか?」

看護師「はい、じゃあ今お水用意しますね」

『あれ、今度は女の人の声だぞ…』

『もう朝の時間で担当の看護師さんが代わっ

たのか…?』

ヒロ田「ところで今何時ですか?」

看護師「5時30分です」

ヒロ田「あー、もう5時30分なんですね」

看護師「そうです」

「ヒロ田さん、ところで痛みとか吐き気とか

はありませんか?」

ヒロ田「大丈夫です。それよりもさっきから

口の中が乾いて凄いんですよね」

看護師「薬の影響かな…。今はうがいしかで

きないから辛いと思いますけど…」

ヒロ田「はい、うがいで口の中がスッキリす

るので今のところゼンゼン問題ないです」

看護師「わかりました。じゃあ何かあったら

ナースコールここにあるので鳴らしてくださ

いね」

ヒロ田「わかりました」

ボクはナースコールを確認し、そのあと恐る

恐るお腹に手を持っていく。

『あー、袋がついてるな。とうとうストーマ

になったんだ…』

『これでもう便意は無くなったということだ

な…』

『にしても袋の中に便は出てきてないようだ

な…』

『当たり前か、手術したばかりなんだから…』

『あれ、それにしても天井近くないか…』

ボクは明るくなってきた病室内を、寝たまま

グルリと見まわしてみた。

『あー、ベッドが高くなってるんだ…』

『そっか、看護師さんや先生が立ったまま

処置できるもんな…』

そんなことを思っているうちに、いつしか

また眠りについたのである。

ーつづくー

ヒロ田

[広告]
ヒロ田レクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

[広告]
ヒロ田レクタングル(大)