結核の疑いで個室に入っているおかげでシャ
ワーを浴びる時間に制限がない。
これが大部屋に入っていて、浴室を利用する
となれば、今日は午前、明日は午後…という
感じで、男性、女性が交互に利用できる時間
帯が入れ替わるようになっている。
そのため午前中が男性の入浴時間で、朝から
検査だったりするとタイミング悪く入浴でき
ないことがある。
その点、個室は自由だからいいのだが、同時
にクローン病の治療ができないというのは、
これまた辛い。
ただただ採血、尿検査の結果を待つだけだ。
それにしてもトイレの回数が相変わらず多い。
1日に10~12回は行く。
ボクは抗生剤が原因だと思っている。
というのもボクは数年前から抗生剤のクラビ
ットというクスリを飲んで下痢するように
なった。
もちろん最初からなっていたわけではない。
何度か飲んでいて下痢の症状が出てきた。
症状が出てきた時は、絶食して高カロリーの
点滴しかしていないのにもかかわらず、トイ
レの回数が減っていくどころか逆に増えてい
った。
この時は今までになかったパターンだったの
で『なぜ下痢をするのか?しかも回数多く…』
と不思議に思いインターネットで調べてみる
と、抗生剤で下痢する人が結構いるではない
か…。
おまけにクラビットを調べてみると、副作用
に【下痢】と書いてある。
ボクは抗生剤の副作用で下痢になっているの
だとその時に思った。
下痢だけだとクローン病が原因かもしれない。
だが絶食して高カロリーの点滴にしているに
もかかわらず回数が増えたことでボクは抗生
剤の仕業だと考えた。
そして前に行っていた病院の肛門科の医師、
主治医に状況を話し、クラビットの可能性が
高いということで飲むのをやめた経緯がある。
その結果、クラビットの服用を中止してから
はトイレの回数も減ってきたのである。
今回のトイレの回数が多いのも、抗生剤を疑
っているのだがIBD専門医師(以下IBD医師)
が止めていいと言わない。
なぜなら、肺炎が治らないからというのが理
由だ。
ただ違うタイプの抗生剤を出してくれたり、
いろいろ考えてはくれているのだが、トイレ
の回数は減っていない。
火曜日の朝。
回診でIBD医師が病室に来る。
結果がまだわからないとのことだった。
けれど、結核ではなく肺炎という診断がレン
トゲンでわかったとのことで、今日の午後か
ら大部屋(四人部屋)への引っ越しが決まっ
た。
IBD医師「レントゲンを見る限り、結核では
ないことがわかったけれど、クローン病の治
療をしていくのに、万全な状態でやらないと
ダメだから、とりあえず明日の朝の採血で判
断します。
あと、排膿されている膿などの検査結果も明
日にはわかるから、それで決めていきましょ
う」
ヒロ田「わかりました。ただ、今週中に退院
は厳しいですね?」
IBD医師「うーん、何とも言えないなー。
とりあえず検査結果を見てから決めましょ」
ボクは、入院が延びることを覚悟した。
なぜなら、予定している大腸カメラの検査を
やっていないからだ。
大腸カメラの検査をするときに、大腸の狭窄
部分を拡張するバルーン拡張術も一緒にやる
予定だ。
バルーン拡張術は日帰りではできない。
何かあったら(出血が止まらないとか…)
困るからという理由で一泊入院する必要が
ある。
更に、レミケードかヒュミラで炎症を抑える
治療をすると言っている。
(レミケードは点滴、ヒュミラは皮下注射)
ということは、仮に水曜日に結果がわかって、
翌日の木曜日に大腸カメラ&バルーン拡張術、
金曜日もしくは土曜日に退院という流れじゃ
なければ今週中の退院は無理だ。
少しばかり期待しながらも、ある程度、入院
が延びるということも覚悟しておかないと
今後の予定が狂ってくる。
ボクは、延びるという前提で今後の予定を考
えるようにした。
なぜなら、退院日が延びたとなった時にガッ
カリ度合いも高くなり、かなり落ち込むこと
が想像できたからだ。
ボクは、なるべく冷静さを保つためにも退院
は延びるんだと決めて予定を組み始めた。
「ヒロ田さん、数字良くなった!
炎症反応(CRP)が0.07になったよ!!」
いつもの朝より少し早い水曜日の8時30分頃、
大部屋へと引っ越したボクのところにIBD
医師がやってきた。
いつもと違い、笑顔で来たから随分嬉しかっ
たのだろう。
炎症反応(CRP)は、0.3以下で問題なしと
されている。
ボクは、クローン病になってから良くて1.80
だったり2.35という感じだった。
それが今回は0.07だ!
正直ボクも初めて正常値(0.3以下)の数字
を見た。
ヒロ田「えー、そんなに下がってるんですか
?いやー、今までで初めてです。そんなに下
がったの…」
IBD医師「痔ろうの手術もしたしさ、抗生剤
の点滴もしてたしね。
あと、絶食もしてたからそれも良かったのか
もね」
IBD医師が笑顔で言う。
IBD医師「それでさー、今日、骨盤のMRI検
査をやって他の検査結果も出てくるだろうか
ら、それを見てクローン病の治療方針を決め
ていこう!」
ボクは、痔ろう手術をしたのは良いけれど、
膿の溜まっていたところが切開されていなく、
ちょっと心配していたことを医師は知ってい
る。
だから、再度MRI検査をして、きちんと排膿
されているか、溜まっているところはないか
の確認をしたいのだと思う。
もちろんボクも気になっているから確認した
い。
ヒロ田「痔ろうの手術も、シートン入れると
ころ(あちこちにできた膿の通り道)をまと
めてくれたんですよね?きっと。
たぶん、この溜まってるところを直接切ると
中側じゃなくて、外側から見える場所ですも
んね」
IBD医師「うん、直接溜まってるところは、
押すと違う場所から出てくるので、そこをう
まくつなげて切開してると思うよ。
でもこればかりはねー、何とも言えないから
さ。もし溜まっていたらまたその時に考えよ
う。とりあえずMRI撮ったらわかるからさ」
ヒロ田「そうですね、まずそれでハッキリし
てからですね」
IBD医師も気になっているようだ。
IBD医師が病室を出てしばらくしてから、
フトこんなことを思った。
『だけどもし溜まっていたら、また切開する
のだろうか…?』
『となれば、また入院は延びてしまうな…』
『でも、せっかく痔ろうの手術をするために
入院したのに溜まったまま退院するのもなー
…』
炎症反応(CRP)が下がって嬉しい反面、
『退院はいつできるのか?』
『検査結果はどうなってるんだ?』
『骨盤のところのMRI検査で痔ろうが良くな
ってるとかハッキリわかるのかな…?』
そんな不安な気持ち、焦りも出てきたのであ
る。
ーつづくー
ヒロ田