ポートに刺しているヒューバー針のクランプ
が開いていたことでスムーズに生食をフラッ
シュすることができた。
『しかし、なぜできたのか…?』
今まであったことを思い返して考えているが
原因が良くわからない。
そのまま次の日の朝を迎えた。
朝は、いつもと同じようにフラッシュをして
仕事へと向かう。
ヒューバー針はもちろんつけっぱなしだ。
仕事が終わり、自宅に帰ってきてから点滴の
準備をする。
『果たして今日はどうか…』
いつも夜に行うフラッシュには気を遣う。
なぜなら、あまりフラッシュがスムーズにい
かないと血栓ができて詰まってしまうことが
あるから…と主治医に言われているので、生
食の入ってるシリンジを押しても上手く流れ
ないときは凄く気になってしまう。
『押しても引いても流れなかったらどうする
?病院に電話か?』
そんなことを毎回思いながらフラッシュして
いる。
でも、昨日の夜はスムーズにできた。
ポートにつけてるヒューバー針のクランプが
開いた状態だったけれど…。
さて今日は上手くいくのだろうか…。
生食の入ったシリンジを押してみる。
『あれ…やっぱり固い。また動かないぞ。
何でだ?』
また押したり引いたりしてみる。
何回か繰り返しやっていると、小さな音だが
プシュっという音とともにチューブ内を生食
が流れていく。
『いったい何なんだ?』
『昨日できて今日ができないのはなぜだ?』
『クランプが開いたままだったらスムーズに
流れたのに…』
結局この日もわからずじまいで次の日を迎え
る。
だが、とうとう原因を突き止める日がやって
きた。
いつものように仕事から帰ってきて点滴の準
備をする。
生食をフラッシュするときがやってきた。
今度は慎重にやってみる。
ヒューバー針についているクランプが開いて
る時は問題なくスムーズにできた。
しかもクランプが開いてた時は、朝にフラッ
シュしてから8時間は経過している。
ということは…
チューブの中で高カロリーの点滴が固まって
いるということではない。
ボクは、そう仮説を立てて今回は慎重にフラ
ッシュすることにした。
シリンジをコネクター部に挿し、クランプを
開く。
そしてシリンジを押してみる。
やはりうんともすんとも言わない。
『なんでだろう?』
そう思いながら、無意識でクランプの開いた
あたりのチューブを触っていると、ちょっと
押すときに重たい感じがしたけれど生食が流
れ出した。
『あれ?流れ出したぞ!』
ボクは、触っていたチューブのあたりを良く
見てみる。
すると…
クランプを閉じていた部分のチューブが長時
間閉じているからか、折れ曲がっている。
そのため、クランプを開いたとしても、チュ
ーブが折れ曲がったままの状態だから、一回
押したくらいでは流れなかったのだ。
『あれ?これが原因だったのか?』
ボクは、生食の流れがあまり良くなかったの
で、自分の手でチューブの折れ曲がりを直し
て再度生食を流してみた。
すると…
スムーズに流れ出したではないか!!
『なんだよー、原因はこんな単純なことだっ
たのか…』
ボクは思わず笑ってしまった。
こんな単純な原因だったとは…。
反面、安心することができた。
原因がわかったことでスッキリした。
原因がわからないときは、高カロリーの点滴
がチューブ内で固まってしまってる可能性が
ある。
もしそうならば、血管内で血栓ができてしま
うかもしれない。
そんなことを思いながらの毎日だった。
ただ、押して引いてを5回くらいやってると
生食が流れ出していたので、主治医も「何か
変だなー、もし固まっていたらそんなんで通
るだろうか…」というようなことを言ってい
た。
「もしかしたら、手順で問題あるかもだから、
もう一度看護師さんに確認していって」とい
う話を前回していた。
しかし、看護師さんに手順を確認したところ、
まったくボクのやり方で問題なかった。
でも、クランプを止めていたところの折れが
原因で生食が流れなかったと考えてもいなか
った。
原因がわかったボクは、次の日、念のため本
当に折れ曲がりが原因かを試すことにした。
クランプを開いてチューブが折れたままの状
態で生食をフラッシュしてみる。
流れるか?流れないか?
当然、流れることがない。
そこで、チューブの折れ曲がりを真っ直ぐに
してみる。
そしてもう一度フラッシュする。
今度はスムーズに流れる。
これで『間違いない』ということがハッキリ
した。
ボクは、それ以降チューブの折れを直してか
らフラッシュするようにした。
すると、押したり引いたりすることなく、
スムーズに流れるようになった。
定期検診の日。
いつも通り採血を終え、待合室で待っている
と、看護師さんがボクの様子を聞きに来る。
看護師「調子はどうです?」
ヒロ田「はい、調子はいいです。それでフラ
ッシュが上手くいかないと言ってたじゃない
ですか?その原因がわかりましたよ」
看護師「えっ、何だったんですか?」
ヒロ田「いやー、ホント笑っちゃう話なんで
すけど、クランプを長時間止めているから、
それでチューブが折れて、その折れがあるこ
とで流れなかっただけなんですよ」
看護師「えー、そうなんだ。そんなことある
んですねー。そっか、私たち長時間止めてお
くことないから気づかなかっただけかもしれ
ないですね。とりあえず原因わかって良かっ
たです」
ヒロ田「いやーホントです。これで安心しま
した」
看護師「それじゃあ、先生に呼ばれるまでも
う少し待ってて下さいね」
生食が上手く流れなかった原因がわかったこ
とで、ボクは明るい気持ちで主治医から呼ば
れるのを待っていたのである。
ーつづくー
ヒロ田