第128話 MRIポートの抜去が始まった

第128話 MRIポートの抜去が始まった

医師「それじゃ、ヒロ田さん顔にもこれかけ

ますね」

そう言いながら、布のようなものをボクの顔

にかけてきた。

医師「それじゃ消毒しますね」

医師「麻酔します」

医師がこれからやる作業を言ってくれるのは

有難くもあるが、そのたびに力が入ってしま

う。

まぁ、何をやってるか聞かされないよりは、

これからやるべきことを言ってくれたほうが

安心するかもしれないが…。

いよいよ局所麻酔だ。

局所麻酔は、ボクの場合だけかもしれないが、

針を刺すときよりも、液を注入されてる時の

ほうが痛い。

だけど今回は医師の注射が上手いのか?

あまり痛みを感じない。

患部が化膿してるからか…?

と思ったその瞬間、少し痛みを感じてきた。

この局所麻酔というのが、何箇所か刺すもん

だから時間が長く感じる。

後半の三箇所くらい打ったところは痛かった。

医師「はい、麻酔終わりました」

医師「これ痛いですか?」

どうやら尖ってるようなもので、皮膚を刺し

ているようだ。

ヒロ田「そうですね、何となくチクっと感じ

ます」

医師「じゃ、これはどうですか?」

ヒロ田「凄く痛いわけじゃないですけど、何

となく感じます」

医師「まだ効いてないかな…?化膿してるか

ら効き悪いかなー…?もし痛みがあるような

ら、麻酔しながらやっていきますね…」

『おいおい、麻酔効いてないうちにやってく

のか?』

医師の言葉にボクは一気に不安になった。

医師「それじゃ始めていきますね」

ヒロ田「お願いします」

顔には布がかかっていて、何も見えない状態

だから、やはり声をかけてくれるのは安心で

きる。

ジジジ、ジジッ、、、

電気メスで切ってる音が聞こえてきた。

全身麻酔以外の麻酔で嫌なところは、作業を

しているのがわかること。

できれば眠って意識が無い時にやってもらい

たいものだ。

しかし、そうもいかない。

まだ痔ろうのシートン手術のように、顔から

離れてる場所ならまだいい。

けれど、今回のMRIポートの抜去は、左の鎖

骨下だ。

顔が近いし当然、耳も近い。

何をどうやってるかまでは、顔に布がかかっ

てるからわからないけれど、切ったりしてる

のはすぐにわかる。

おまけに医師の呼吸も聞こえてきそうなくら

いだから、ちょっとした独り言なども耳に入

ってくる。

ジジジ、ジジッ…

何だか、電気メスの音ばかりが聞こえる。

医師「ヒロ田さん、どうですか?痛くないで

すか?」

ヒロ田「痛いというのか熱い感じがします」

医師「えっ?熱いですか?じゃぁ、もう少し

麻酔します」

『えっ?麻酔効いてなかったのか…?』

皮膚を切るだけなら、とっくに終わってて

いいくらいなんだけど、なかなか終わらない。

ジジジ、ジジッ…

という感じの音から、

ジ、ジ、ジジー…と切ってる時間が長くなっ

てきた気がする。

医師「今度どうですか?」

ヒロ田「なんか、すごく熱い感じがするんで

すよ」

医師「あー、いま止血してるので、その熱が

周りの皮膚に伝わって熱く感じるのかもしれ

ませんねー。もう少しで止血できると思うの

で、熱く感じなくなると思います」

『電気メスで止血?』

切るだけだと思ってた電気メスだが、なんと

止血もできるようだ。

それにしても血が止まらないからか、皮膚に

電気メスを当ててる時間がちょっと長い。

その熱で皮膚が熱く感じるわけだ。

医師「よし、これで大丈夫かな」

医師が独り言のように言った。

医師「いま、周りを消毒してクスリ塗ってお

くので、もうちょっとで終わりますから」

そう言って、グリグリと押す感じで何かを塗

っているようだ。

医師「よーし、これで大丈夫です。あと形成

の先生に診てもらって、今後の診察の予定を

決めてください。いま形成の先生きますから」

少しすると形成の先生が来て傷口を見た。

形成の医師「あー、大丈夫そうですねー」

手術した医師「それじゃー、あと先生のほう

で術後の経過観察をお願いします」

形成の医師「それじゃー、まず明日傷口見せ

に来てもらおうかな」

ヒロ田「えっ?明日ですか?」

形成の医師「来れないです?」

ヒロ田「今日の明日なのでちょっと厳しいで

すねー。明日来たとしたら次はいつですか?」

形成の医師「本当は、ここ一週間毎日来てほ

しいとこなんです」

ヒロ田「えー、一週間毎日は厳しいです。仕

事も残ってて…」

形成の医師「でも傷口見ておかないと、感染

症とかになったらもっと大変だから、見て消

毒してクスリをつけないと…」

なんとなんと、MRIポートを抜去すればそれ

で終わりって話ではなかった。

診察予定がこんなにあるとは思ってなかった。

『引き受けてる仕事はどうする?』

『一週間毎日通うとなれば時間は午前?

午後?』

『病院に行く時間だけ仕事抜けてくるか…?』

ボクは数秒間の間にいろんなことを考えたの

である。

ーつづくー

ヒロ田

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