第54話 エレンタールが上手くいき次は食べることばかり考える

第54話 エレンタールが上手くいき次は食べることばかり考える

順調にいけば12月28日に退院できる。

退院まではあと3日だ。

手術した傷口も順調に回復していて、残る

課題はエレンタールができるかどうか?

にかかっている。

昨日のことを考えると、また具合悪くなって

エレンタールを中止することになったら、

退院も延びてしまうのではないか?という

懸念もあった。

同時に、退院後は食事をしていこうと考えて

いた。

もちろん入院している段階では食事の許可が

出ていない。

あくまでも『退院後に主治医の先生の判断で

…』ということだった。

ボクは主治医が言っていた『手術後は食べれ

るようになるよ』という言葉を信じていた。

というよりも、【手術した=食べていい】と

思っていたボクは、早く食べたかったのだ。

ただ、昨日はエレンタールを開始しただけで

具合が悪くなった。

『こんな状態で食事したら、もっと具合悪く

なるんじゃないか?』

という懸念もあったのだ。

そのため、どうしても今日の夜のエレン

タールは、具合悪くならないようにしたい。

ボクは看護師さんにこう提案した。

ヒロ田「昨日はエレンタールを持ってきて

もらったりで時間が遅くなり、夜からのスタ

ートになったけれど、今日は昼くらいから

600kcalでスタートして21時頃終わるように

やってもいいですか?」

夜中の寝てる時に具合悪くなってしまうと

気分も落ち込むし面倒だ。さらに看護師さん

にも迷惑がかかってしまう。

と思ったのでそう提案した。

看護師さんや医師も、エレンタールのことに

関してはボクにすべて任せてくれるとのこと

だった。

『1時間50mlで落としていき、慣れてきた

ころ80mlにして…』と二段階に分けて

落としていこうと考えた。

万が一、具合が悪くなっても日中だから

何とかなるだろう…。

こうしてボクは予定時刻の12時に600kcal

でエレンタールをスタートさせた。

もちろん看護師さんにも伝え、何かあれば

連絡するということも伝えた。

スタートして30分。

看護師さんが様子を見に来た。

看護師「ヒロ田さん、どうですか?」

ヒロ田「今のところ問題ないです」

看護師「このまま問題なく進むといいですね」

ヒロ田「そうですねー。おそらくゆっくり

落として、慣らしていけば大丈夫だと思うん

ですけどねー」

看護師「大丈夫だといいですね。また後で

来てみます」

そう言って看護師さんが病室を後にした。

問題はここからだ。

やはり1時間を超えないと何とも言えない。

なぜならボクが今までエレンタールを摂取

して具合が悪くなったのが1時間以内だから、

その1時間を超えるまでは安心できない。

ただ1時間以上やってから具合悪くなった

ことが無いので、この1時間が目安になる。

『具合が悪くならないか…?』

そんなことばかり頭に浮かんできたので

テレビを見ながら気持ちを紛らわす。

しばらくたってフト時計を見ると、1時間が

過ぎている。

『おっ、大丈夫じゃないか!』

看護師さんも1時間過ぎて様子を見に来た。

ヒロ田「大丈夫かもしれません!」

看護師「あー、良かったです。何かあれば

いつでも言ってくださいね」

ボクは安堵し、テレビをつけたまま少しの

時間寝てしまったようだ。

21時前。

エレンタールの終了する機械のアラーム音が

病室内に鳴り響く。

ボクは鼻からチューブを抜き、エレンタール

の後始末をしながら小さく心の中でガッツ

ポーズした。

一歩進むことができた。

後は、エレンタールでの摂取量を増やして

いき、退院後に食事ができるようにしよう。

そう考えた。

ちょっと汚い話になってしまうが、手術後、

初めてトイレに行ったとき、便が緑色っぽ

かった。

『何だコレは…?』

最初はビックリした。

だからと言って看護師さんや医師に聞くこと

はしなかったが、自分の勝手な解釈で

『オレの腸は赤ちゃんの状態に戻ったのでは

ないか?』と考えた。

赤ちゃんすべてそうなのかはわからないが、

緑色っぽい便をすると聞いたことがある。

それを思い出し、ボクは勝手に『赤ちゃん

の腸に戻った』と考えたのである。

赤ちゃんということは、母乳やミルクから

始まり、次に流動食、そして固形物へと

変わっていく。

『えっ?ということはオレまだ固形物食べ

れないんじゃないか?』

赤ちゃんの母乳やミルクが、ボクの場合は

エレンタールにあたるか…?

そう考えたら…とバカなことを自分勝手に

想像したのである。

暇だとホントとんでもないことを考えて

しまう。

それも良いアイデアとかを出すために考える

というならいいのだが、悪いようにしか考え

ないのだから困ったものだ。

この時も、【退院後、年末年始だから食べれ

るようにしたい!】という気持ちが強かった

ために、『緑色の便→まだ赤ちゃんの状態→

ミルクから流動食→そして固形物…。

と考えたら年末年始食べれるのか…?』

そう単純に考えてしまったのである。

いま思えば笑ってしまうのだが、この時は

真剣にそう思っていた。

エレンタールの摂取は上手くいった。

おそらく明日以降も問題ないだろうし、

摂取量を増やしていっても問題ないと思う。

この調子でいくと予定通り退院だ。

『食事はどうする?』

『そもそも食べて大丈夫なのか?』

『お粥やうどんから始めたら大丈夫か?』

エレンタールが上手くいった後は、食べる

ことばかりを考え出した。

手術をしてくれた病院の外科医は、「食事の

ことについては紹介してくれた消化器内科の

先生(主治医)に従ってください」と言って

いた。

主治医は「手術したら食べれるようになる」

と言っていた。

本当であれば、手術後に主治医の診察が

約三週間後にあるので、それまで食べずに

いればいいのだろうけど、【手術したら

食べれるようになる】ということが

ずっと頭にあり、しかも年末年始だから

余計に食事したい気持ちが強かったのだ。

この時のボクの頭の中は『食べる』こと

ばかり考えていたのである。

ーつづくー

ヒロ田

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