2016年4月15日、入院して二十四日目の朝を迎えた。
昨日、予定していた4月21日の手術が、4月28日に延びたと伝えられた。
入院してから二度目のIVH用カテーテルを先日入れたのだが、その入れたカテーテル
の先に血栓ができ、その血栓を溶かすためヘパリンという点滴を開始することになった
ため手術を延期しようというのだ。
入院した当初、4月7日に手術しようかという話があった。
『えっ、そんな先なの…』
『3月23日に入院しているのに4月7日が手術日…?』
ボクは入院する前に、一ヶ月余裕持って仕事を休めば問題ないか主治医に聞き、
主治医も一ヶ月もあれば問題ないとのことだった。
なので、もっと早い展開で手術までいくのだろうと自分では思っていたため、
最初に言われた4月7日という手術日ですら長く感じたのだ。
だが、入院してから採血やいろいろな検査の結果、体力がかなり落ちていてこのままでは
回復するのも時間がかかり、早く手術をしたとしても、今度は退院するまで時間がかかる。
そうIBDチームの医師が判断し4月7日の手術が延期になった。
そして次の手術候補日が4月21日。
4月7日から二週間後だ。
これまた長く感じる。というよりも実際長かったが…。
そして4月14日になり、手術まであと一週間となった。
『待ちに待った手術まであと一週間だ!』
『来週は手術だぞ!』
『この辛い便意ともお別れだ!』
そう心の中で喜んでいた矢先、カテーテルの先に血栓ができたということでもう一週間
手術日が延期となった。
ここで今まで蓄積されていた鬱憤が爆発する。
「IVH用のカテーテルを入れなければこうにはならなかった。2回目入れるってなった時も、
前に感染して熱出たのに、これでまた感染して熱出たらどうします?高カロリーの点滴は
別にいらないんじゃないですか?とも言ったはずだ。それを栄養つけなきゃってことで
やることになったけど、結局こういうことになったら意味ないじゃないですか…」
そんなことを言ったところで手術日が早くなるわけではない。
だが、『はいそうですか』と冷静に受け止める気持ちの余裕もなかった。
『もしかしてオレだから手術を延ばしても大丈夫だろうと思ってるんじゃないだろうな…』
『他の人を優先してオレは後回しみたいな感じなのか…?』
『オレの身体がストーマにしたくないって言ってるのか…?』
『手術しないほうがいいってことだろうか…』
『もしかしてココの病院と縁がないのかな…』
昨日、IBDチームの医師たちから手術延期の話を聞いた後、こんなことばかりが頭の中を
駆け巡る。
ボクは、今日の朝の回診時、IBDチームと主治医にこう言った。
ヒロ田「先生、4月28日の手術がまた延びるようなことがあったら一度退院しますね」
主治医「えっ?退院?退院て言ってもねー…。退院してもすぐ手術やってくれる病院
は無いと思うよ」
ヒロ田「いや、他の病院で手術するなんてことは考えてません。絶食してるからか幸いな
ことに少し体調が良くなってるように感じてて、手術しないでもう一回考え直してみよう
かと思ってきたんですよー」
主治医「いや、だけど来週の手術は大丈夫だと思うよ。28日で決定しようってことも
外科の先生言ってたし。外科の先生も状況が状況だから早く手術したい考えはあるみたい
だからさ」
ヒロ田「はい、28日で手術することになるのであれば問題ないですけど、もしまた延びると
なったら、今度はゴールデンウィーク明けになっちゃうじゃないですか。そうなるとさすがに
病院で待ってるのも辛いなーと思って。なんか延び延びになって手術することに冷めてきた
というか、このまま手術しなくてもいいかなという気持ちも強くなってきたんですよ」
主治医「うーん、さすがにハイいいですよとは言えないけどさ…。でも来週は手術すると
思うよ。外科の先生にはオレからも言っておくしさ」
ヒロ田「もちろん来週で手術が確定するならゼンゼンいいんですよ。ここまで待ったんです
から何が何でも手術したくないってわけではないので。ただ次も延びた時です。延びたら
一回退院して仕切り直ししたいと思ってるって話です」
主治医「あー、そっか。まずわかったよ。今のところ28日で手術する予定だから、大丈夫だと
思うけど外科の先生にも再度言っておくわー」
そう言い残し医師たちは病室を後にした。
『もし4月28日の手術ができなく延期になったとしたら…』
ボクは昨日からカレンダーをチェックしていた。
『毎週木曜日が消化器の手術をやっているようだから、もし28日の手術が延びたと
したら…?』
『うわ、5月5日が木曜日になってる』
『てことは…、28日に手術できないことになると5月5日はゴールデンウィークだから
手術はやらないな…』
『そうすると次の週だと…』
『5月12日かー…』
『4月28日の手術が延期になったら、今から約一ヶ月は黙って病院で過ごさなければ
いけないことになるぞ…』
考えすぎかもしれないが今までの流れからすると、十分延期になる可能性がある。
もし延期になって、約一ヶ月間何もせずに病院で過ごすということを想像できなかった。
いや、想像したからこそ嫌になってきたのだ。
4月28日で手術日を告知されて三度目になる。
三度目の正直という言葉もあるが、二度あることは三度あるという言葉もある。
『三度目の正直だ!4月28日の手術は間違いなく行われる!!』
そうプラスに考えることもできる。けれど…
『二度あることは三度あるかもよ。4月28日の手術がダメになった時のことも
考えておかないと…』
どちらの考え方が良いか…?
それは人それぞれだろう。
だが、ボクは期待していてダメになった時に、酷くガッカリすることを回避したい
タイプだ。
そのため最悪なことをイメージし、延期になった時は一度退院させてもらって、
考え直そうという結論になったのである。
ーつづくー
ヒロ田