第158話 IBDチームの山口先生が病室にボクの愚痴を聞きに来た

第158話 IBDチームの山口先生が病室にボクの愚痴を聞きに来た

朝の回診が終わり、主治医やIBDチームの医師が病室から出ていった後も、

ボクの気持ちは収まらない。

『4月28日の手術が延期になったら一度退院させてもらおう』

『けれどその後はどうする?』

『一ヶ月とか二ヶ月後での入院を考えるか?』

『でも、そもそもココの病院でいいのか?』

『一回退院してから再度入院したとしても、また手術が延び延びになったら

今と同じことだよな…』

『それなら退院して病院を変えてしまったほうが良いのかもな…』

『だけどそうなるとまた一からになるな…』

『それもどうなのかな…』

『どうするのが良いのだろうか…』

4月28日に手術ができなければ退院はさせてもらう。

ただ、その先はどうするか決まっていない。

違う病院に変えたいという気持ちもあるが、今までのデータや引継ぎなどのことを

考えるとこれまた面倒だ。

『どうすればいいんだろう…』

手術が延び延びになってることでボクは悩んでいた。

治すための入院がストレスでもっと悪化しそうな勢いだ。

「ヒロ田さん、いま大丈夫ですか?」

10時30分頃だろうか…。

ボクがいろいろなことを考えているときに、IBDチームの山口先生が病室に入ってきた。

ヒロ田「あっ、大丈夫ですけど…」

山口先生「いやー、今回ねー手術がまた延期になってしまって…」

ヒロ田「そうですね、ホントがっかりしました」

山口先生「そうですよねー。せっかく手術を決断して入院したのに、手術が延びると

身体も辛いですよね」

ヒロ田「そうなんですよ。もうトイレ通いが疲れちゃって…」

山口先生「いま40回以上行ってるって言ってましたっけ?」

ヒロ田「まぁ40回以上と言ってますけど、正直なところ数えれないくらいというか、

便意を感じたら漏れてしまっているという状態なので、数を数えれないと言ったほうが

正しいですかね」

山口先生「それは辛いですよねー」

ヒロ田「そうなんですよ。もうそのトイレが辛いから手術すると決断したのに、これじゃ

何のために入院したんだかわからないですよ」

山口先生「そうですよね。勝田先生もヒロ田さんにストーマ手術を提案してるんだけど、

なかなかウンと言わないんだよ。そのヒロ田さんがストーマの手術を決断したんだ。

と、ヒロ田さんが入院する前に話してたので、ヒロ田さん相当悩んで決断されたんだろう

なと思ってました。それなのに手術が延びたら辛いですよね」

ヒロ田「あっ、勝田先生そんなこと言ってました?」

山口先生「はい、言ってましたよ」

ヒロ田「勝田先生に、一ヶ月仕事休めば手術やって退院できますか?って聞いたら、一ヶ月

もあれば大丈夫だねと言ってたから入院したんだけどゼンゼンです。もう入院だけで一ヶ月

になりますよ」

山口先生「いやー、そうですよねー。それはホント申し訳ないです。通常は一ヶ月も余裕が

あれば退院までできるんですけどね。だけど今回いろんなことが重なっちゃいましたもんね

ー」

ヒロ田「そうなんですよ、IVHなんかやらなくても良かったと思います。最初のIVHは

しょうがないとしても、二回目はねー、カテーテル入れる必要なかったですわ。まぁ

いまそんなこと言ってもどうしようもないんですけどね。ただこのあとなんですよ。

4月28日の手術がまた延期ってなったらゴールデンウィークに手術なんかしませんよね?」

山口先生も病室に貼ってあるカレンダーを見ている。

山口先生「そうですねー、ゴールデンウィークは手術しないですね」

ヒロ田「そうなると次の次の週になるので5月12日が手術日だと思うんですよ」

山口先生「あー、確かにそうなってしまいますねー」

ヒロ田「そうなったら、そこまで入院して待ってるのも辛いなと思ってて、一度退院させて

もらって手術を考え直そうと思ったんですよ。朝の回診の時にも言いましたけど…」

山口先生「そうですよね、そう考えてしまいますよねー。ただ、私たちも4月28日で手術

が行われるように外科の先生にも伝えていくし、外科の先生もその予定で考えているみたい

なので今のところは予定通り4月28日で手術すると思います」

ヒロ田「4月28日で手術するっていうならそれまで頑張りますけど、それが延期になったら

もう限界ですね。なんかストーマにする気持ちも冷めてきつつあって、お漏らしは続くけど、

それも今となっては慣れてきて、このままでも良いか…?とも考えたりしてます。だから

次の手術予定日が延びたらもう気持ちが完全に冷めてしまうと思うんですよ」

山口先生「そうなっちゃいますよね。わかります。私もヒロ田さんの立場だったら同じよう

に考えると思うので…。私たちも本当はもっと早く手術をしてほしいと思ってたんですけど、

感染して高熱が出たり、血栓ができたりで手術ができないと外科の先生が判断して延び延びに

なっちゃいましたけど、今回は私たちもヒロ田さんの考えを伝えていきますし、外科の先生も

4月28日には手術をしようと言ってるので大丈夫だと思います」

ヒロ田「だといいんですけどね。あと、もうIVHはやらなくていいです。結局いまやってない

状態ですからね。このままでも死にはしませんて」

山口先生「そうですね、もうIVHはやらない方向でいこうとチーム内でも話しているので、

やることはないです」

ヒロ田「そういえば血栓が残ってるからダメだってなるんじゃないですか?」

山口先生「いや、血栓は外科の先生もあんまり気にしてないようだったので、小さく残って

るくらいじゃやると思いますよ」

ヒロ田「そうですか、まずわかりました。4月28日の予定で考えておきますね」

山口先生「はい、私たちも外科の先生に伝えていきますから」

どうやら山口先生がボクのグチを聞くだけで病室に来てくれたようだ。

IBDチーム内でヒロ田の精神状態が良くないから、誰かグチを聞いてあげたほうがいいんじゃ

ないか?男性より女性のほうがいいから山口先生の出番だ!ということで山口先生が来るこ

とになったのか…?

それとも山口先生が状況を聞いて独断で来たのか…?

どちらかはわからない。

どっちにしても山口先生がボクのグチを聞いてくれたことで、胸のつかえが取れ、

4月28日まで頑張ってみようという気持ちになったのである。

ーつづくー

ヒロ田

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