第179話 ストーマ手術後5日目の夜に急遽IVHカテーテルを抜去する

第179話 ストーマ手術後5日目の夜に急遽IVHカテーテルを抜去する

「ヒロ田さん、すいません遅くなりました」

先ほど病室を出ていった当直医が、別の医師

を連れて病室に入ってきた。

医師「カテーテルを抜去してほしいって聞い

たんですけど…」

ヒロ田「はい、そうです」

「ちょっとこの感覚は前に感染した時の感覚

と似てるんですよ」

「このままカテーテルを入れてたら、おそら

くまた感染して熱が出ることになると思いま

す」

医師「そうですか…」

医師「ただ、ボクらが勝手に抜くわけにも

いかないので、担当の先生に連絡とってみ

てるんですけど、ちょっと連絡がつかなく

て…」

「このまましばらく様子みて連休明けに

担当の先生に確認したうえで抜去したほうが

良いかと思うんです」

ボクも、その気持ちは理解できる。

ゴールデンウィーク中だし、しかも異変を

感じ、看護師さんに伝えてから時間が経ち

すぎて、消灯時間にもなっている。

何も問題なければこのままにしておきたい。

しかし、二度同じ体験をし、今回で三度目。

ボクには嫌な予感だけしかない。

ヒロ田「いや先生、いま抜去してもらわな

いと明日の朝起きたときに感染して熱出て

る可能性があります」

「今まで感染した状況と同じ感じなんです」

医師「そうですか…」

医師「まだ熱も出てないですし、このま

ま様子見ても良いのかと思うんですけど…」

ヒロ田「いや先生、このままにしていいん

ですけど、感染して熱出たら退院延びませ

んか?」

「それが凄く嫌なんですよ」

「手術前にも同じことがあって、ボクもその

時は良くわからなかったから、そのまま放置

してたんですけど、結果、熱が出て手術も延

期になってるんです」

「そして今回も感染が原因で退院が延期にな

って…となったらどうします?」

医師「そうなんですけどね。でも勝手に

取るわけにはいかないかな…と思って…」

ヒロ田「先生、わかりますよ。IVH使えな

くなると腕から点滴しなきゃいけなくなる」

「で、ボクの血管は出づらくて針を刺すの

に一苦労する」

「だけど、ボクはエレンタールで栄養を摂

取するようになって、特に高カロリーの点滴

も必要なくなっている」

「それに、手術前、外科の先生とも話ました

けど、今回のIVHはあくまでも保険で、手術

後に問題なければ抜去しますって言ってまし

たよ」

「手術前にボクが感染のこと気にしてたので、

それでそう言ってたんだと思いますけど…」

「なので、もし何か言われたら、ボクが感染

しそうだから抜去してほしいってしつこく言

われたと言ってください」

「おそらく何も言わないと思いますから」

ボクは感染して熱が出ることを避けたかった。

ただ、事実として熱が出ているわけではない。

ボクの感覚だけで言っているだけだ。

医師たちからすれば熱が出ているわけでもな

いのに何を言ってるんだ?と心の中で思って

いるだろう。

けれど、熱が出てからでは遅いのだ。

医師「そうですか。わかりました。それじゃ

今から抜く準備しますね」

ヒロ田「ありがとうございます」

『ゴールデンウィーク期間中に申し訳ない

ことをしたな…』

『でもな、こればかりはいつ感染するかわ

からないからどうしようもないよな…』

『だけど、これでカテーテルを抜去しても

らえれば感染源はなくなるわけだから安心

して寝れるな…』

医師たちは一度ナースステーションに戻り、

看護師さんを連れて病室に戻ってきた。

医師「じゃあ抜きますね」

ヒロ田「はい、お願いします」

医師「抜きましたので、後は血が止まるま

で押さえますね」

医師「これで大丈夫だと思います」

ヒロ田「あっ、ありがとうございました」

看護師「じゃあヒロ田さん、腕から点滴する

ので針の準備してきますね」

ヒロ田「わかりました。じゃあちょっとその

間にトイレ行ってきていいですか?」

看護師「はい、大丈夫です」

時計を見ると22時が過ぎていた。

暗く、静寂な廊下を歩きトイレに向かう。

『カテーテル抜去できて安心したな…』

『けど先生たちには申し訳ないことしたな

…』

『でも感染したらそんなことも言ってられ

ないしな…』

『あっ、そういえば点滴スタンド押してな

いな…』

『点滴が無いっていいなー…』

ボクはそんなことを思いながら病室へと

戻ってきた。

「ヒロ田さん、点滴の準備できましたので

針刺しますね」

そう言って看護師さんが病室に来た。

ヒロ田「すいませんね、血管出づらいのに…」

看護師「頑張ります!」

ヒロ田「いやー、ホント感染する前触れって

感じでしたから、あのままカテーテル入れっ

ぱなしだったら熱出てたと思います」

看護師「どんな感じだったんですか?」

ヒロ田「肩が凝ってるというか、IVHカテー

テル入ってる左側の方だけが重い感じがして

きたんですよ」

「で、手術前の消化器内科でも同じ感じに

なって熱が出てきたし、ずいぶん前にも体調

悪くして入院した時に、IVHで同じようにな

って熱が出たんです」

「だから今回もこのままにしておいたら熱が

出るなーと思ったんですよね」

看護師「そうなんですね」

ヒロ田「IVHのカテーテルが残っていると腕

から点滴しなくて良いし、針の交換とかも考

えなくていいから残しておいたほうが良かっ

たんでしょうけどね…」

「でも熱出たら嫌だし…」

看護師「そうですね、気になったままにして

おいて熱が出たら嫌ですもんね」

「よし、点滴の針刺しましたよ!」

ヒロ田「あっ、ありがとうございます」

看護師「問題ないと思うんですけど、もし血

管痛とか出てきたら言ってくださいね」

ヒロ田「わかりました」

こうしてストーマ手術後5日目の夜は終わって

いったのである。

ーつづくー

ヒロ田

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