在宅中心静脈栄養療法というものがある。
HPN(Home Parenteral Nutrition)と
呼ばれるようだ。
どんなことをするのか…?
簡単に言うと、絶食してエレンタールの
摂取でも体調が良くならない場合、その
エレンタールですらも中止し、点滴のみ
で生活する栄養療法のことだ。
点滴となれば、普通は入院して医師の指示を
受け、看護師さんが点滴用の針を血管に刺し、
点滴を滴下するというのが一般的だ。
しかし、そうなると学生であれば学校に、社
会人であれば職場に行くことができなくなる。
そのため、在宅で点滴が行えるよう、中心
静脈(心臓近くの太い血管)にカテーテルを
留置し、そこに自身で針を刺し点滴を行う。
それができれば学校や仕事に影響がでない
ので、食べることはできないが、それ以外は
普通に生活できるようになる。
ボクは、そのカテーテルの中でも完全皮下埋
め込み式カテーテルと言って、正式には皮下
埋め込み型ポートと言われるものを左側(心
臓側)の鎖骨下の中心静脈に留置し、絶不調
の時には良く使用させてもらった。
身体に埋め込むので、手術室で局所麻酔をし
て行う。
ポート留置の手術に関しては別の機会に書く
として、そのポートを留置すると高カロリー
の点滴が自宅で行えるようになる。
ポートは500円玉くらいの大きさをイメージ
していただくとわかりやすいかもしれないが、
それが鎖骨下に埋め込まれる。
500円玉のように薄ければいいのだが、厚さ
があるのでそこだけ盛り上がって見える。
1cm~1.5cmくらいの高さはあるだろうか。
もちろん皮膚の下に埋め込むので、パッと
見はわからないと思う。
ただ、近くで見るとポコっと皮膚が盛り上が
っているので『皮膚のできもの…?』と他人
が見たら思う人もいるかもしれないが…。
しかし、ボクはそのポートにはずいぶん助け
られた。
まず、体調が悪くなると食事を止めて絶食し
エレンタールのみを摂取して栄養を摂るのだ
が、そのエレンタールでもダメなくらい体調
不良になる時がある。
どんな体調不良かと言うと、やはりクローン
病特有の下痢する回数の多さが一番だ。
ボクは、それに伴い痔ろうの悪化がある。
下痢する回数が増えると膿がどんどん出て
くるようになるか、もしくは切開されて
いないところだと膿の行き場が無くなり、
膿が溜まって痛くなってくるかのどちらか
が起きてくる。
この症状が食事ではなく、エレンタールでも
そんな状態になってくると、かなり調子が悪
いということだ。
そこでエレンタールもせずに栄養を摂取しな
ければいけないのだが、その時にこの在宅中
心静脈栄養療法の登場である。
ボクは、エルネオパ2号輸液という高カロリ
ーの点滴をしていた。
自宅に帰ってきてから次の日の朝までで
1,640kcal摂取できる。
一般的な成人のカロリーは1,800kcal~2,200
kcalと言われているので、若干少ないくらい
だが、体調不良の時はこの点滴を二週間する
だけでずいぶん体調が良くなったものだ。
そのため、本当に体調悪い時は自宅に帰って
この点滴をするのが楽しみだった時もある。
やり方は、皮膚に埋め込んだポート(ポート
はシリコーンゴムでできている)にポート専
用のヒューバー針と言われる針を刺し、高カ
ロリー点滴をつなげスタートさせる。
点滴は、ポンプと言われる機械を通して滴下
されるので、自動的に送り込んでくれて異常
があるとアラームが鳴り知らせてくれる。
異常が起きたことは今までなかったが…。
血管ではなくポートに針を刺すので、正確性
は必要ない。
そのポート内(500円玉くらいの大きさ)で
針がカチッと止まるとこまで押せば、針刺し
はほぼ問題なく完了する。
ただ、不潔にしているとダメなので消毒
(病院から処方される)は必須だ。
よく病院で看護師さんが針を刺す前にアルコ
ール綿で皮膚を消毒する。
それと似たような感じだ。
ボクは、ポピドンヨードというものを渡され、
それで針刺しの前に消毒し、針を抜いた後も
新しいポピドンヨードで消毒した。
この在宅中心静脈栄養療法で一番気をつけ
なければいけないのは、カテーテル感染だ。
ボクは、このカテーテル感染でポートを
抜去している。
ある日、ポートを入れた場所の皮膚が痒く
赤くなり、微熱が出て怠くなってきたのだ
が、このとき痔ろうも悪化していて痔ろう
の手術をやった後だったので、それの影響
かもしれないと思っていた。
運良く痔ろうの手術後に消化器内科の主治医
の診察もあっためポートのところの痒みや
赤みについて聞いてみた。
すると、感染してそうなっているからすぐに
抜去しなきゃいけないということになり、そ
の日の夕方に抜去した。
ポートは5年くらいで交換するのが目安
だが、特に何もなければずっとつけてて
問題ないと設置した時に聞いていた。
結局ボクは8年目くらいで抜去することに
なり、その後、期間をあけて違う場所に
再び新しいポートを設置しようということ
だったが、その前にストーマ(人工肛門)に
なったため、今のところポートの必要性は
無く、ポートの埋め込みはしていない。
在宅中心静脈栄養療法は、絶食というのが
辛いかもしれないが、ボクのように下痢の
回数が増えて、痔ろうも悪化してくる人に
は、良い治療方法だと思っている。
二週間もやっていると体調も良くなって
くるので、エレンタールだけでもいまいち
だという方にはオススメの治療法である。
ヒロ田