第156話 ストーマ手術のための入院二十三日目は手術延期を告げられる

第156話 ストーマ手術のための入院二十三日目は手術延期を告げられる

2016年4月14日、入院して二十三日目の朝がきた。

昨日は、IVH用に入れたカテーテルの先に、小さな血栓ができたということで、

急遽ヘパリンの投与が開始された。

点滴はすぐ終わるのかと思いきや、血栓が無くなるまで24時間ずっと点滴をするとのこと。

『そんな大ごとなのか…?』

正直『血栓と言ったって…』とナメていたボクは、徐々に事の重大さに気づいていく。

予定としては4月14日の今日、外出して服を買いに行くはずだったのだが、24時間ずっと

点滴を流していなければいけないとの理由で外出許可は出ず、病室で過ごすこととなった

のだ。

病院に入院してるのに辛い…。

『入院すれば…、手術をすれば…、この便意とはおさらばできる』

そう思ってストーマ手術を決断し、入院することにしたのだが相変わらず便意は続く。

当然、食べてもいなければエレンタールもしていない。

点滴のみなのにもかかわらず、入院前と同じく便意は続いている。

まぁ、肛門があるのだから便意があるのは当たり前なのだけど…。

なんと言っても一番困るのは、水分を摂るとオムツの外に漏れてしまうのではないか?と

思うくらい大量に出てしまうことがある。

特に温かい飲み物は危ない。

飲まなければいいんだろうけど、絶食中は温かい飲み物に癒される。

心なしか、温かい飲み物を飲むとお腹も満足するので、ついつい早飲みし、量も少し

多めに飲んでしまうというのも原因だろう。

この温かい飲み物を飲んだ直後の便意は気をつけなければいけない。

量が多く出てしまうとオムツから外に漏れだしてしまうからだ。

ただ、飲んだ直後だけとは限らない。

かなり時間が経って『もう大丈夫だな…』と油断していると、急に量が多く出てきたり

する。

オムツの外に漏れ出すと病院から借りているパジャマはもちろん、ベッドも汚してしまう

かもしれない。

『漏らすわけにはいかない…』

そんなことを思いながらの入院も二十三日が経った。

そうやって気を使って入院しているからか、精神的にもかなり参っていた。

『外出もできない…。これで手術も延期…となったらホント嫌になるな』

『これだったら別の病院で手術をお願いしていたほうが良かったんじゃないか…?』

『二十三日も経ってたら手術も終わってるし、もしかしたら退院しているかもな…』

『だからと言って、別の病院に行ったところですぐは手術しないよな…』

『またそこでも大腸カメラやって、胃カメラやって…となるだろうし…』

『予定通り21日に手術してほしいわー』

『外科の先生OKしてくれないかなー』

頭の中は、昨日からそんなことばかりだ。

そんなことを自分の頭で考えていたところで答えなんか出ないのはわかっている。

けれど、だからと言って他のことを考える余裕もなかったのである。

8時30分頃、いつもより早めに主治医と木田先生、女医の山口先生が病室に来た。

主治医 「ヘパリン順調にいってるようだね。このままちょっとしばらく続けて、

数日後にCT撮って血栓が無くなってるか、小さくなっていたらカテーテル抜くよう

にするからね」

「それでね、手術は血栓もちょっと気になるので一週間延期させようってことになった

んだよね」

ヒロ田「えー、一週間延期ってことは28日ですか?」

主治医「うん、やっぱり今のままじゃ良くないだろうってことになってさ」

ヒロ田「いやー、それなら一回退院させてもらっていいですか?もうそこまで待って

られないです」

主治医「いや、今はヘパリンやってるから退院はさせれないよ」

ヒロ田「もうね、キツイんですよこのままの状態で入院してるのも。幸いなことに点滴

だけで生活してきたからか体調も何となく良くなってきてるし、このまま絶食続けていた

ら良くなるんじゃないかと思ってきました。なんかストーマにもしなくて良いんじゃない

か?とも思ってきたし…」

主治医「いや、だけど今の状態のままじゃ退院は厳しいし、手術も一週間だけだよ延びる

のは…」

ヒロ田「いや、その一週間が長いんですよ。もう入院してから手術をかなり待ってますから

ねー。便意が続いている状態で入院して手術を待ってるっていうのが辛いんですよー」

今までのストレスがけっこう溜まっていたのだろう…。

溜まっていたものが一気に爆発した。

主治医「うん、そうなんだろうけどね…。だけどどっちにしても血栓がある状態だと危ない

から退院はさせれないよ」

ヒロ田「まずは手術が延びたってことはわかりました。で、予定では一週間延びて4月28日に

手術する予定ってことですね?」

主治医「うん、そうだね」

ヒロ田「わかりましたわー」

もうホントがっかりした。

『血栓ができて退院させてくれないのはわかった』

『だけど今後はどうする?』

『手術は28日って言ってるけど、それを拒否して退院させてもらって仕切り直すか…?』

『それとも違う病院に行って手術してもらったほうがいいか?』

『でも、違う病院に行ったところでまた検査からだろうな…』

『だからと言ってどこの病院がいいんだ?』

『いやー、ホント嫌になってきたな…』

イライラしているボクの頭の中は、そんなことばかりでいっぱいだったのである。

ーつづくー

ヒロ田

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