第56話 手術後初めての食事は退院後の自宅で食べる

第56話 手術後初めての食事は退院後の自宅で食す

退院するときというのは、入院の時よりも

荷物が増えてしまい片付けが大変だ。

『こんなに持ってきてたのか…?』

そう思ってしまうほどだった。

今回は、エレンタールを後で持ってきたと

いうこともあり、余計多くなっている。

片付けをする前は、いろんな不安が頭の中

を駆け巡っていたが、自分自身で解消させた

から気持ちはスッキリだ。

そうなると、早く帰りたい気持ちが強くなる。

ただ、片付けなければいけない。

まだ体調が本調子ではないからか、動きが

鈍い。

片付けが面倒なのだ。

『何とか頑張って片付けなければ…』と

思い、テレビを見ながらできる場所を

片付けていき、どうにかすべて片付けた。

後は迎えを待つだけだ。

この待ってる時間というのも長く感じる。

落ち着かず病室内をウロウロ。

しばらくすると迎えが来た。

看護師さんに挨拶をしてから車の中へ…。

『あ~、約一ヶ月ぶりの外だな…』

何とも言えない感覚だ。

外に出ると病院内で歩いていた時と違い、

不思議なのだが疲れやすい。

外に出れたことで無理してる…?

それとも違う原因なのか…?

理由は良くわからないが疲れやすいのだ。

退院するとやるべきことがたくさんある。

仕事は、会社がすでにお正月休みに入って

いたから社員と会うことはない。

ボクもしばらく仕事のことを考えるのは

止めよう。

その代わり食べ物のことに集中しよう。

そう、やるべきことというのは、食べ物の

ことを考えることだ。

頭の中は食べたいものだらけ…。

車に揺られて数十分。

ボクは約一か月ぶりに自宅へと帰ってきた。

『あ~、やっぱりいいなー。自宅は落ち

着くな…』

ボクは自宅に着いて早々パソコンを立ち

あげた。

お正月のレシピを考えるために…。

クローン病の安全食、NG食と言われてる

食べ物は、もう何度も見ているのだが…。

それでも何度見ても楽しいものだ。

会社は12月28日~1月4日まで休み。

そのためボクが退院した日はちょうど

お正月休み1日目だ。

入院したのが12月1日。

消化器内科に入院し、その後、痔ろうの

手術で肛門科へ入院、その後、大腸バイ

パス手術で外科に入院という流れだった。

約8日はゆっくりできる。

さて、そんな12月28日の退院日。

主治医の受診日までエレンタールで過ごす

ことが望ましいとは思うのだけれど、ボク

は『食べる』と決めていた。

ただ、さすがに退院したその日から、固形物

を口にするのはちょっと勇気がいる。

そこで具なしの味噌汁と雑炊を食べて様子を

みることにした。

退院したのが夕方だから、食べるのは

晩御飯になる。

さっそく晩御飯の準備にとりかかった。

と言っても作るのは簡単なのだが…。

そして久々に実食。

最高だ!!

塩味というのはずっと口にしてなかったから

とっても癒された。

『雑炊も何度食べただろう…』

『具なしの味噌汁も何度口にしただろうか…』

毎回同じで飽きそうな気もするが、これば

かりは飽きることが無い。

絶食で一番簡単に空腹を満たしてくれるの

は飴だとボクは思っている。

甘いもので空腹感は多少満たされる。

ただ、それが続くと飽きてくる。

ところが塩味は別だ。

食べ続けても飽きることは無い。

ただ、絶食が長いとちょっとした塩味でも

濃く感じる。

そのため減塩になる。

健康のことを考えると一石二鳥だ。

と言ってもクローン病という病気になって

いるのだが…。

こうしてボクは退院したその日に手術後

初の食事をしたのである。

クローン病になる前、【食べる】という

ことが当たり前だった。

だから食べれるということに感謝の気持ちを

持ったことが無いというのが正直なところだ。

食べれるのが当たり前で、食べれない病気が

あると想像したことも無かったのだから…。

そんなボクだったからかはわからないが、

絶不調になると絶食をしなければいけない

病気になった。

クローン病になってから、食べれるというこ

とに感謝できる自分がいる。

【食べれるのが当たり前】ではないという

ことに気づいたからだ。

退院後、雑炊と具なしの味噌汁を量は少なか

ったが美味しくいただいた。

もちろん食べれることに感謝して…。

後はお腹の調子がどうなるかだ。

何せ手術後初めて食べたのが自宅で、もし

体調が悪くなってもナースコールはない。

だが、そうは言っても既に食べてしまった

後だ。

気にしてもどうしようもない。

時間の経過とともに結果がわかる。

それまで待つしかない。

そう開き直った。

入院、手術前はトイレに良く行っていたが、

手術後も絶食を続けていたからか、トイレの

回数は激減していた。

退院後、初めて食べてからも今のところは

落ち着いている。

『あれ、ホント手術したことで問題ない腸に

なったんじゃないか…?』

そう期待する。

けっこう時間が経ってからトイレに行って

みると、ちょっぴり下っている感じだった。

それでも痔ろうから膿も出ていなければ、

トイレも頻繁に行きたいわけではない。

『この調子でいけたらいいなー…』

そう願う。

退院後、初めて食事をして問題がないことに

自信を持ったボクは、12月31日の大晦日を

久々に実家で過ごすことにした。

もう7~8年は両親と大晦日を過ごしたこと

がない。

両親と大晦日を過ごすというより、母親の

料理が食べたくなったのだ。

そのタイミングが大晦日だったというだけ

なのだが…。

ボクは母親に電話をし、安全食と言われる

食材が記入された用紙をFAXすると伝え

電話を切った。

クローン病になってから、両親とご飯を

食べるということが無かった。

会えなかったから…という訳ではなく、

ボクの住んでいる場所から少し遠い場所に

両親が住んでいたことと、ボクが独立して

店舗を持ったことで、会う機会が少なく

なったというのが一番の理由だ。

ただ今回は、手術をしたことと食べれること

への感謝の気持ちが強くなったこと。

そして何より母親が小さい時から美味しい

ご飯を作ってくれていたことに対して感謝の

気持ちがすごく強くなり、実家に帰ることに

した。

食べれることは幸せなことだ。

手術後、初の食事でそんな気持ちが更に

強くなったのである。

ーつづくー

ヒロ田

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