第50話 手術後二日目初めてトイレまで歩く

第50話 手術後二日目初めてトイレまで歩く

手術が終わって二日目の朝を迎えた。

今日は、ベッドから起き上がる日だ。

本当であれば、昨日の午後から起き上がる

予定だったが、痛くて起き上がれなかった。

『明日は絶対に起き上がる!』

そう看護師さんに言った手前、今日も無理

でした…。というわけにはいかない。

ボクは朝起きてから、再びベッドから起き

上がってるイメージトレーニングをした。

10時頃、看護師さんが病室に来た。

看護師「じゃあヒロ田さん、起き上がって

みましょうか!」

ヒロ田「そうですね、やりますかー」

そうは言ってみたものの、昨日の痛さが

脳裏に浮かぶ…。

看護師「ヒロ田さん、一気に立ち上がると

いうより、まず座るところまでやってみま

しょう」

ヒロ田「あっ、まずは座るところまでですね

?」

看護師「そうです。ベッドを今起こしますか

ら、後はヒモを引っ張ってココに座りましょ

う」

看護師さんがベッドを垂直に近いくらいまで

起こしてくれる。

そこからはベッドの柵に括り付けたヒモを

使い、自力で起き上がる。

『よーし、やるしかないな!』

ボクは頭を集中させた。

「イテテテ…」

やはり痛かった。

だが今回は何とか座るところまでいった。

しかし座った瞬間、肩に何かが乗っかった

んじゃないか?

と思うくらいズッシリとした重みがくる。

とにかく地面に吸い込まれていくんじゃ

ないか?というくらい下に引っ張られる

感じだ。

看護師「まずは座ることできましたね!

ここから立ち上がることできます?」

ヒロ田「ちょっと待ってくださいね。

なんかすごい肩に重いものが乗っかってる

感じなんですよ…」

看護師「うん、大変でしょうけど、立ち上が

るとこまで頑張ってみましょう!」

ヒロ田「よし、じゃあやりましょうか!」

ボクは立ち上がることに集中した。

おそらく自分一人しかいなければ、このまま

立ち上がるのを諦めて、寝てしまっていた

だろう。

だが、看護師さんがいることと、昨日『

明日は絶対に立ち上がる』と宣言したこと

もあって、カッコ悪いところは見せれない。

『やるしかない!』そう心に決めた。

ヒロ田「じゃあ立ち上がりますね」

そう言って立ち上がる。

しかし、真っ直ぐには立てない。

前かがみにならないと立っていられない。

まるで最敬礼をしてるかのような姿勢だ。

点滴スタンドを杖代わりに何とか立っている

という状態だ。

看護師「ヒロ田さん、まずはOKですね!

これで少し歩いてみましょう」

ヒロ田「わかりました」

ボクは点滴スタンドを杖代わりにし、前かが

みになりながら、一歩一歩前に進んだ。

まずは病室内を…。

ボクの病室は個室だったけれど、トイレの

無い個室だった。

そのためトイレまで行けるかどうか試して

みたかった。

ヒロ田「ちょっとトイレのとこまで行って

みていいですか?」

看護師「もちろんです。どんどん歩いて

ください」

ボクはトイレのある方向を目指して歩いた。

トイレに行く手前にナースステーションが

ある。

数人の看護師さんがボクを見ている。

「あっ、ヒロ田さん歩けるようになったん

だー」

そう言ってる声が聞こえてきたが、愛想笑い

するくらいしかできなかった。

点滴スタンドを杖代わりにし、前かがみに

なりながら何とかトイレまで来た。

トイレまでの距離は病室からどれくらい

離れているだろうか…。

普通に歩ける人だと決して遠い距離では

ない。

だがこの時のボクにはとても長い距離を

歩いた感じだった。

『あ~、歩くのキツイなー…』

まずは目標としていたトイレまで来た。

もうこれ以上歩くのは厳しかった。

ヒロ田「よし、これで一回戻っていいです

か?」

看護師「あっ、戻ります?」

ヒロ田「また後で歩きますので、とりあえず

戻っていいですか?」

看護師「じゃあ戻りましょうか」

病室に戻る前に再びナースステーション前を

通る。

「ヒロ田さん、たくさん歩いてくださいね」

そうお声がけされるのだが、当の本人は痛く

て苦笑いするしかない。

ただ同時に『皆がそう言うってことは、

ホント歩くのを疎かにすると癒着するのかも

しれないな…』

そんなことを思いながら病室に戻ってきた。

病室に戻りベッドに横になると看護師さんが

こう聞いてきた。

看護師「ヒロ田さん、トイレまで自分で行け

そうです?」

ヒロ田「あれ?なんかありましたっけ?」

看護師「うん、いや、まだつけててもいいん

ですけど、もしトイレ行けるなら、尿道に

入ってるカテーテル抜いたほうがいいかと

思って…」

ヒロ田「あー、それありましたかー。

抜いたら自力で行かないとダメですもんねー。

どうしようかなー…」

ボクは迷っていた。

『抜いてもらってもいいけど、もし歩くの

が大変でトイレに行けないってなったら

どうしようかな…』

『でも、管入ってるのも嫌だしな…』

看護師「今日じゃなくても明日とかでも

いいんですけどね」

ヒロ田「いや、抜いてもらいます。

抜くとき痛かったりします?

抜いてものすごくオシッコしたくなるとか…」

ボクはトイレに行けるかという不安もあっ

たが、それよりも抜くとき痛かったら嫌だ

なという気持ちのほうが少し上回っていた。

看護師「抜くのは痛くないと思いますよ。

ちょっと変な感じがするかもしれないけど。

あと、最初のうちオシッコ出づらいかも

しれないので、何回か頑張って出してみて

ください」

ヒロ田「わかりました。じゃあ明日抜くのも

今日抜くのも変わらないと思うので、抜いて

もらっても大丈夫です」

ボクは尿道に入ってるカテーテルを抜いて

もらうことにした。

ーつづくー

ヒロ田

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