2014年5月20日。
入院して13日目。
この調子でいくと5月22日の退院は難しいと
思われる。
けれど、5月23日(金)もしくは5月24日
(土)には退院できる可能性がある。
そんな希望を持ちつつ、午後からは三度目の
MRI検査だ。
一度目のMRI検査は、入院前に肛門周囲膿瘍
が、どれくらい溜まっているか把握するため
の検査で、この時が初めてのMRI検査だった。
丸い筒のようなところに入っていくので、CT
検査と同じイメージをしていたのだが、まっ
たく違っていた。
検査時間は長く、さらに音がうるさい。
いつ終わるのかがわからなく、とても長く感
じた。
二度目のMRI検査は、入院してから腸の詰ま
り具合、狭窄になってる部分を把握するため
に検査した。
この時は、鼻からチューブを入れ、水を流し、
その水の流れを見て、腸のどこに狭窄がある
かを把握する。
この時はIBD専門医師(以下IBD医師)が近
くにいて、水を入れながら、そして話しなが
らだったため、そんなに長くは感じなかった。
ただ腕を伸ばして動かさずという状態が検査
終了まで続いたため腕がしびれて大変だった
が…。
そして今回三度目のMRI検査。
今回は、肛門周囲膿瘍を排膿させる手術をし
た後の経過を見るための検査だ。
一度目の検査同様、骨盤のところだけを検査
する。
CT検査と違って、点滴をつなげたまま検査が
できない。
金属物を持って検査室に入ることができない
ため点滴も外していく。
『また音がうるさく長い時間の検査か…』
ちょっと憂鬱だが仕方ない。
午後から検査室へと呼ばれたボクは、鼻のチ
ューブはつけたままだけれどエレンタールを
中断させ検査室へと向かった。
「ではヒロ田さん骨盤の部分をとりますね」
検査がスタートした。
ピ、ピ、ピ、ピ、ピー…
ガン、ガン、ガン、ガン…
ドン、ドン、ドン…
とにかくヘッドホンをしていてもうるさい。
でも三度目だったボクは、この検査の時間を
利用していろいろ考えることにした。
『検査結果が出て退院が延びたら連絡しな
きゃなー…』
『電話する人、メールで知らせる人を部屋に
戻ったら整理しないと…』
そんなことを考えながら検査を受ける。
今回のMRI検査は、3回目で慣れたからか、
1回目よりは、すごく早く終わったように
感じた。
検査が終わりボクは都合いいように考えた。
『もし早く検査結果がわかって、すぐクロー
ン病の治療、そして木曜日もしくは金曜日に
大腸カメラをしてバルーン拡張術ができない
ものか?』と…。
退院が延びるかもしれないという可能性も
あり、少し覚悟もしている。
けれど、できることなら早めに退院したい。
別にボク自身は退院が延びても良いのだが、
周りの人に5月22日には退院できると伝えて
いたため延びてしまったら、そのことを連絡
しなければいけない。
これが正直面倒なのだ。
早く退院したい、というより早く退院が延び
るのか延びないのかを知りたいという思いが
余計ボクの気持ちを悶々させていた。
ボクは病室に戻り、コーヒーを飲みながら
パソコンに向かっていた。
なぜなら、仕事の依頼がきていたからだ。
パソコンを持ってきていてよかった。
時間は14時30分頃。
IBD医師が来るのは、きっと17時くらいだろ
う。
いつもそのくらいの時間だから…。
ところが今日は違っていた。
「ヒロ田さん、痔ろうの手術バッチリでした
よ。キレイに排膿されている。いま画像見せ
てあげるから、ちょっといいかい?」
IBD医師はずいぶん喜んでいた。
ボクはIBD医師の後をついていく。
カンファレンスルームのような所に行き、
そこで画像を確認する。
正直、素人が見たところでわからない。
IBD医師が細かく説明してくれる。
使用前、使用後じゃないけれど、膿が溜まっ
ていた時の画像と、手術して今日MRIで撮っ
た画像を見せて比べてくれる。
IBD医師「いや~ヒロ田さん、外科の先生う
まくやってくれましたよ。そして、肺の影も
無くなってきてるし、採血結果も良いから、
クローン病の治療に入っていきましょうか」
いよいよクローン病の治療が開始される。
その治療開始日がいつからかで退院できる日
が決まる。
IBD医師「それでね、今週の金曜日にヒュミ
ラを打って、来週の火曜日に大腸カメラをや
って、バルーン拡張もその時にやりましょう。
それで少し様子見てから、ご飯も数日食べて
みて退院という流れになるかなー」
『やはり大腸カメラは来週になるのか…』
退院が延びるのはちょっとショックだけど受
け入れるしかない。
どちらにしても退院に向けて一歩進んだんだ。
IBD医師「退院は、来週の金曜か土曜という
感じかなー。大丈夫かい?」
大丈夫かい?と聞かれても、クローン病の治
療をせずに退院するわけにはいかない。
なので、ボクの答えは当然OKだ。
ヒロ田「大丈夫です。狭窄の状態で過ごすの
も嫌なので…」
IBD医師「じゃあ、もう少しですから頑張り
ましょう!」
そうIBD医師が励ましてくれた。
ボクは、今まで悶々していたものが吹っ切れ
た。
『いつ退院できるか…?』
『退院延びたら皆に連絡しなきゃな…』
そういった余計なことを考えていて、悶々と
していたのだけれど、あと一週間延びたとわ
かった瞬間、良い意味で開き直った。
すると、なんだか気持ちがスッキリしてきた。
痔ろうの手術をして排膿されてきた。
炎症反応が下がってきた。
エレンタールのみの毎日で腸の詰りが少なく
なってきた。
それが気持ちをスッキリさせる要因なのかも
しれないけれど、とにかくボクは、この瞬間
から気持ちがスッキリしたのだ。
今までは、どちらかというとダラダラ過ごす
感じだった。
本をたくさん持ってきても、パソコンを持っ
てきても必要以上に読まないし、パソコンも
開かずテレビを見ていたりダラダラ過ごすこ
とが多かった。
もちろん、今までは検査続きや点滴などがあ
り、落ち着いていることができなかったとい
うのはある。
けれど、その時とは明らかに変わっていた。
なぜだか急に集中力が高まり、仕事モードに
入ってきた。
テレビなんかほとんど見ない。
ほとんどの時間、仕事のことを考えたり、
パソコンで調べものをしたりと、とにかく
活発になってきた。
ちょうど気温も上がってきた時で、温かい
コーヒーなんか飲んだら汗がダラダラ出てく
る感じだ。
それでもボクは、コーヒーを飲みながら最高
に良い時間を過ごした。
コーヒーを飲み、昆布茶、梅昆布茶を飲む。
熱いものばかりだ。
体調が良くなってきたからか、お腹が減って
くるようにもなってきた。
飴の糖分で、空腹を満たしてくれるけれど、
この時は甘いものというより、塩味が欲しく
なってきた時だ。
そう、昆布茶と梅昆布茶は、病院内のコンビ
ニには売ってない。
なので、お見舞いに来てくれる人に買って来
てもらった。
空腹感の時に塩味は最高だ。
お蔭さまでオシッコが近くなったけど…。
さあ、あと一週間で退院だ。
気分が良くなってくると、なぜかこれから始
まるクローン病の治療が楽しみになってきた
のである。
ーつづくー
ヒロ田