第132話 人付き合いも悪くなり都心から郊外へ引越しを決断

第132話 人付き合いも悪くなり都心から郊外へ引越しを決断

主治医から大腸を全摘して人工肛門(ストー

マ)にしたほうが、かなり楽になると提案さ

れたが、どうしても人工肛門(ストーマ)に

なることは避けたかった。

どうして避けたいの…?

と、そのときに聞かれたら返答には困ってい

たように思う。

というのも、特に理由が無かったからだ。

ただ何となく人工の肛門というのが嫌だった。

主治医から提案された次の日に、ボクは今の

まま(大腸全摘せず)でいくことを決めた。

いや、自分の心がけで悪くなってる大腸が良

くなるのでは?

そういう気持ちも強かった。

だからボクは、何とか今の状況から良い状況

に持っていこうと考えた。

やはり基本は絶食してエレンタールでの生活

が良いだろう。

『大腸全摘するくらいなら絶食生活なんか余

裕だ!』

そんなことを思い、絶食生活をスタートする。

だが、二週間もしてくると食べたい気持ちが

強くなってくる。

おそらく絶食して体調が少し良くなってくる

からだろう。

初めてクローン病と診断されたとき、絶食生

活だと言われ、二年くらい絶食することがで

きた。

食べたい気持ちは確かにあった。

でも『食べたらダメだ』という気持ちが強く

何とか食べずに生活することができた。

だが、一度食べだしてしまうと、体調が悪く

なり、絶食をしていても少し調子が良くなっ

てくると『食べても大丈夫じゃないか…』と

いう気持ちが強くなり、絶食も長続きしなく

なっていった。

この時期も絶食は長く続かなかった。

頑張っても最長一ヶ月くらいなものだ。

一度食べてしまうと食に火がついてしまう。

何でも食べたくなるのだ。

だが、今回はさすがに暴飲暴食はできなかっ

た。

体に良い、クローン病に良いと言われてる

食事をするよう心掛けた。

お粥、梅干し、乳酸菌が良いと聞けばその

乳酸菌を買ってみたり…。

甘酒は飲む点滴と言われている。

『自分の身体にもいいんじゃないか』

そう思えば甘酒を作ってみたり…。

発酵食品が身体にいいらしい。と聞けば味噌

汁をはじめ、納豆、ヨーグルト…。

身体に良いと言われてるものは、いろんなも

のを試した。

この頃、人付き合いも悪くなっていった。

いや、悪くなったというより外出が怖く

なっていたのだ。

お誘いを受けても『体調不良なので…』と

いう理由で断っているうちに誘ってくること

も無くなった。

そりゃそうだ。自分も誘う側の立場であれば

二度、三度と誘って断られると誘いづらくな

る。

誘ってくれる人も『体調良くなったら連絡

ちょうだい~』と言ってくれるも自分から連

絡することはない。

したくてもできない状況だった。

トイレの回数が一日15~20回になっていたか

らだ。

さすがに1時間に1回くらいトイレに通うよう

になると疲れてくる。

おまけにトイレに間に合わなければお漏らし

をしてしまうかもしれない…。

とてもじゃないが人に会う気にもなれなかっ

た。

ただ、仕事に行かなければ生活ができないの

で仕事と家を往復する毎日だけは続けていた。

しかし、そんな仕事も厳しくなってきた。

トイレ通いが多くなり、仕事への集中力もだ

んだん無くなってきたのだ。

ボクは、改めて今の生活を見直すことにした。

幸い人付き合いをしなくなってから、お声が

かかることも無くなり、人とお酒を飲むこと

も食事をすることも無くなった。

最初は人と会うことが少なくなってきたこと

に、ちょっぴり淋しくなり自分の体調の悪さ

に腹を立てたこともある。

でも、孤独な期間も長くなってくると、それ

が当たり前になり、何となく気持ちも楽にな

ってきた。

この頃は、都心に住んでいたのだが、夜の会

食も無くなるし、仕事の拠点と言っても都心

にいる必要はない。

であれば…と、ボクは郊外に引っ越すことを

決めた。

確かに都心から郊外に引っ越すと不便にはな

る。

しかし、出歩かなくなったボクが都心にいる

必要もない。

出歩きたいとも思わない。

家→仕事→家…。

そんな生活で良いんじゃないか?

一日にトイレの回数が15~20回になったこ

とで、精神的にかなり疲れていたのだろう。

外出することが嫌になっていた。

『引っ越して最低限必要な金額はいくらだ?』

ボクは、引っ越してから支出はどれくらいに

なるのか計算した。

というのも、最低限必要な金額の分だけ仕事

しようと考えた。

計算してみると都心の半分以下で生活できる

ことがわかった。

引越しは三ヶ月後にすることにした。

そうと決まったら断捨離だ。

ほとんどのモノを捨てて身軽にする。

決めたらどんどん捨てれるものだ。

本当に必要最低限のモノだけにして、ほとん

ど捨てた。

トイレに一日15~20回通い、お漏らしをし

てしまうかもしれないという恐怖感はあった

けれど、新しい生活ができることに何となく

ワクワクもしていたのである。

ーつづくー

ヒロ田

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