ボクは、IBD専門の医師(以下IBD医師)で
はなく、前の主治医に再び診察してもらうこ
とになった。
だが、前主治医と会ってから10日くらい経っ
た頃だろうか…。
病院からボクの携帯に電話が来た。
電話に出てみると、前主治医からだった。
前主治医「あっ、ヒロ田さん、電話大丈夫か
い?」
ヒロ田「はい、大丈夫です」
前主治医「いや、あのね、T先生のこと知っ
てるかい?ヒロ田さんが初めてクローン病で
入院したころくらいにいた先生なんだけど…」
ヒロ田「あー、名前は聞いたことありますけ
ど顔は覚えてないです」
前主治医「あっ、そうかー。でもT先生は知っ
てたわ、ヒロ田さんのこと」
ヒロ田「そうなんですね。何か名前は知って
るんですけど、顔が思い出せないんですよね
ー。確かあの時ってチーム制で2チームに分
かれていましたよね?」
前主治医「そうそう、それでボクのところに
いた先生なんだけどさ」
「いや、それでね、その先生が今IBDセンタ
ー(今とは違う病院で)にいるみたいで、
T先生に診てもらったほうが良いんじゃない
かなーと思ってさ…」
ヒロ田「あー、やっぱりIBD医師と同じ病院
内だから、先生(前主治医)に診てもらうの
は厳しいんですかねー?」
前主治医「いや、そんなことはないんだけ
どね。でも、IBD専門で診てる先生のほうが
良いと思ってさー」
ヒロ田「そうなんですね。どちらにしても、
次回の予約の時に一度行きますので、その
時に詳しく聞いても良いですか?」
前主治医「あー、じゃあそうしようか」
そんな話をして電話を切った。
『やはりIBD医師と同じ病院内だからいろい
ろと問題があるのだろうか…』
『前主治医に診てもらいたいと思っていたん
だけど、同じ病院内だとやっぱりやりづらい
のかな…?』
『でも、先生(前主治医)は、自身の年齢も
あって、長く医師を続けていけないのかな?
先を見越して他の先生を紹介してくれてたの
かな…?』
勝手にだけれど、そんなことをボクは考えた。
正直、前主治医に診てもらえないとなるとガ
ッカリだ。
何となく淋しい感じがした。
でも、紹介してくれる先生は前主治医の部下
で、信頼もできるのだろう。
まったく知らない人ではないから良いのかな
…。
できれば前主治医に診てもらいたい。
その少しの可能性を期待して次回の予約日に
話を聞くことにした。
そして前主治医の診察日。
いつものように採血をし、ポートフラッシュ
をやってもらい、診察に呼ばれるまで待合室
で待っていた。
すると見たことのある人がボクの目の前を通
る。
つい最近まで診てくれていたIBD医師だ。
「あっ、おはようございます」
IBD医師がボクに気づき挨拶してきた。
「おはようございます」とボクも挨拶をする。
特にそれ以外の会話は無かった。
何だか申し訳ない気持ちにもなったが、それ
以上に、不信感のほうが強くなってしまった
から、こればかりはどうしようもない。
気持ち的に嫌だったけれど、すぐに頭を切り
替えた。
しばらくすると前主治医のいる診察室からボ
クの名前が呼ばれた。
前主治医「ちょっと前回よりCRP高くなって
るねー」
「それで電話でも話したけど、T先生に診て
もらったらどうかなー?」
ヒロ田「やっぱり同じ病院内だとやりづらい
ですよね?」
前主治医「いや、そんなことないんだけど、
IBD専門で診てる先生のほうが、今後のこと
を考えても良いと思うんだよね」
ヒロ田「そうですかー。ボクは先生が良かっ
たんですけど、そう言うならT先生のところ
で診てもらいますか…」
前主治医「うん、それでね、もし何かあった
ら、もちろんボクのとこに来てもらって構わ
ないからさ」
ヒロ田「じゃあ、そうしてみます」
「これって、先生からの紹介状というかお手
紙が出るんですか?」
前主治医「なんか、いらないって言ってたけ
ど、一応データとかも合わせて手紙も書いて
おくからさ、それヒロ田さんの自宅に送るよ
うにするよ」
「それで、T先生のいる日が来週だと木か金
なんだってさ。予約どうする?」
ヒロ田「あれ?来週とかですか?でも早いほ
うがいいですもんね。じゃあ木曜日にします。
時間て希望だせるんですか?」
前主治医「いや、それがね午後からじゃない
とダメなんだってさ。それで、午後からで予
約入れておいて、後で時間が決まったらボク
のほうからヒロ田さんに電話いれるわー」
ヒロ田「わかりました。ではそれでお願いし
ます」
こうしてボクは、前主治医ではなく、新たな
先生のお世話になることとなった。
もし、紹介してもらった先生が嫌な先生だっ
たり、IBD医師のような先生だったら、迷わ
ず前主治医のところに行こう。
何かあったら来てもらってかまわないと言っ
てるんだし…。
まずは新しい先生の話を聞いてみよう。
そう考えたのだ。
それにしても、T先生はボクのことを覚えて
いると言っていたけれど、ボクはまったく覚
えていない。
『どんな先生だったか…?』
『嫌な先生ではないだろうな…?』
『でも、前主治医のチームで一緒にやってい
た先生ならおかしい先生いなかったよな…?』
そんなことを思いながら自宅へと車を走らせた
のである。
ーつづくー
ヒロ田