まさか、お漏らしをするようになり、オムツ
が必要になるとは思ってもいなかった。
それでもオムツをすることで安心することが
できた。
と、最初は思っていた。
ところがパンツタイプのオムツを穿いてるだ
けでは横漏れしてくることがあったのだ。
これは想定外だ。
しょっちゅうではないが、内股のギャザーか
らチョロチョロと漏れてくる。
これには参った…。
心配事がまた一つ増えたのだ。
どうしようかとパンツタイプの構造を改めて
チェックする。
良く見てわかったことは、パンツタイプは受
け止める箇所が薄いということだ。
もちろんオシッコなら吸収しやすいのかもし
れないが、何せ大便だ。
『でも、水様便だけどな…』
そう、この時のボクの便は水様便になってい
た。
だからこそ我慢できずにお漏らしにつながる
のだと思うが…。
そのお漏らし防止のためにパンツタイプのオ
ムツにしたのだが、内股のギャザーから漏れ
るとなれば何か対策を打たなければいけない。
かと言って普通のオムツをつけるとオシッコ
の時に困る。
やはり上げ下げしやすいパンツタイプが便利
だと考えた。
この時のボクは、そのパンツタイプのオムツ
の上に下着を着用していたのだが、それでも
漏れたわけだから、それプラス何かをしなけ
ればいけない。
そこでボクはあることを思い出した。
今まで痔ろうで排膿されたときに下着が汚れ
ないよう快適パッドなるものをつけていた。
その快適パッドをパンツタイプにつけよう。
そう考えたのだ。
よくよく調べてみると、外側のパンツタイプ
のオムツ、そして内側にパッドをつけるのが
本当のようだ。
ボクの場合、その上にボクサータイプのピチ
っとしたボクサーブリーフと言われる下着も
つけていた。
これで少しは安心できる。
もちろん漏らさないようには努力はするけれ
ど…。
こうしてオムツ生活に入ったわけだが、オム
ツを着用しなければいけない状況というのは、
いま考えると、やはり体調が良くなかったの
だろう。
けれどボクはこのまま乗り切れると考えてい
た。
そんなある時、ボクは主治医にこう言った。
ヒロ田「先生、そろそろ大腸カメラしたほう
がいいと思うんですけどどうでしょう?」
主治医「あれ、なんかあったかい?」
ヒロ田「いえ、クローン病になってから毎年
やってるので、そろそろやったほうがいいの
かなーと思って」
主治医「そうだねー、そういえばココに来て
からやってないしね。ちょっと見ておこうか」
こうして大腸カメラの日を予約した。
新しい主治医と出会ってから1年くらい経っ
て初めての大腸カメラだ。
カメラは主治医ではなく同じチームの医師が
やってくれた。
カメラの日は特に診察もなく、後日の診察の
時に大腸カメラの結果を聞くことにしていた。
そして大腸カメラの結果を聞く日。
ヒロ田「どうでしたかね、大腸は…」
主治医「いやー、一言で言うと酷いね」
ヒロ田「えっ?そんなにですか?」
主治医「うん、もう大腸全体的に潰瘍になっ
てるわー」
ヒロ田「えー、そうなんですかー…」
主治医「これは大腸全部取ったほうが楽にな
ると思うんだよねー」
ヒロ田「えっ?大腸全摘ですか?」
主治医「そう」
ヒロ田「というと、人工肛門になるというこ
とですか?」
主治医「そうだねー」
ヒロ田「いま人工肛門にしなくても肛門を温
存させるような手術もありましたよね?それ
じゃダメなんですか?」
主治医「正直ねー、痔ろうでしょ?その痔ろ
うで酷くなってる肛門を残しておきたくない
わけよー。残しておくと痔ろうガンが怖いよ
ね」
ヒロ田「痔ろうガンですか?耳にはしていま
したけど、残しておくと痔ろうガンになる可
能性ありますか?」
主治医「いや、なるともならないとも言えな
いけど、複雑痔ろうで、しかも長期間痔ろう
になってるでしょ?だから普通の人よりはリ
スク高いよね。だから肛門を温存しないで、
永久的な人工肛門にしたほうがいいと思うん
だよね」
ヒロ田「人工肛門ですかー…。できれば避け
たいところですけどね」
主治医「もちろんねー、悩むところではある
と思うけど…。でも今の状況だと辛いだけ辛
くて良いことないと思うんだよねー。大腸全
摘したほうが、きっと今よりもずいぶん楽に
なると思うよ」
ヒロ田「そうですかー。だけど今はいやです
ね。人工肛門のことは頭には入れておきます
けど…」
主治医「うん、もちろん急がないけどそうい
う選択肢も考えてもらったほうが、今後良い
と思うから…」
なんと、思いもしなかった展開だ。
お漏らしするくらいだから、大腸の状態は良
いとは言えないだろうと思ってはいた。
でも、まさか大腸全体が潰瘍で酷い状態にな
っているとは思ってもいなかった。
さらに人工肛門(ストーマ)を提案されると
は…。
ボクは、帰りの車の中で人工肛門(ストーマ)
の提案にショックを受けていた。
自宅に帰ってからもしばらくは落ち込んでい
た。
でも翌日、ボクは人工肛門(ストーマ)には
せず、絶食したりして体調をコントロールし、
このままの生活ができるようにしよう。
そう考えたのである。
ーつづくー
ヒロ田