第20話 タバコとコーヒーそして具なし味噌汁

第20話 タバコとコーヒーそして具なし味噌汁

ボクはずっとタバコを吸っていたのだが、

クローン病と診断される少し前から、

急にタバコが不味くなり、そのタイミングで

タバコを止めていた。

退院してからも特に吸いたいと

思わなかったし、クローン病にタバコは

良くないと言われていたので、このまま

止めていようと思っていた。

一緒に仕事をしていたビジネスパートナーは

けっこうなヘビースモーカーだ。

だからと言ってタバコを止めたボクが

気になったことはない。

ところが、、、だ。

体調が良くなってきたからか、

退院してから三ヶ月くらい経ったある日、

ボクは凄くタバコが吸いたくなった。

そんな時、ボクのビジネスパートナーは

プカプカとタバコを吸っている。

最初は我慢していたのだが、どうにも

我慢できず、とうとうタバコを1本

恵んでもらった。

『久々のタバコだ。

フラフラするのではないか?

不味く感じるのではないか?』

そう思っていたのだが、以外にも

とっても美味しく、フラフラすることも

なかった。

この時、不味く感じていれば

良かったのだが…。

『あー、、、吸ってしまったよ…』

そんな罪悪感もあったのだけれど、

欲求のほうが強く、結局その日は

合計3本もらって吸ったのである。

『もらってばかりじゃ申し訳ない』

というもっともらしい言い訳を自分にし、

自宅に帰る途中、コンビニでタバコを購入。

ボクは退院三ヶ月後にタバコを復活させた。

翌日、今度はタバコにコーヒーがセットに。

ちなみにコーヒーもクローン病には

良くないと言われている。

にもかかわらずだ、欲求のほうが勝って

しまい、コーヒーを飲みながらタバコを

吸う。

久々のコーヒーは美味しいもんだ。

『何でこうタバコとコーヒーって合う

のかな…』

なんてことを思いながら。。。

タバコを吸って、コーヒーを飲んで…。

肝心の体調変化は…?

これが、トイレの回数にはまったく影響が

なかったし、具合が悪くなったりという

体調不良もなかったのだ。

ボクは、どんどん不良患者化していく。

いつしかタバコの1日に吸う本数は、

病気する前に吸っていた本数と

同じくらいの30~40本に達していた。

タバコは病気する前と変わらず

ショートホープ。

久々なので軽いタバコにしたほうが良いか?

とも考えたのだけれど、ビジネスパートナー

が軽いタバコを吸っていて、前にも経験した

のだが、なぜか軽いタバコを吸うと頭が

痛くなってくるのだ。

今回、いくら久々とは言え、軽いタバコ3本

吸って頭が痛くなったボクは、少しきつい

タバコが合っているようなので、病気する

前と変わらずのショートホープを購入。

そしてもう1つ。

この頃、タバコ、コーヒー以外に

楽しみがもう1つ増えていたのである。

それは具なしの味噌汁を飲むことだ。

体調が回復してくると、空腹感が増して

くる。

空腹感は飴で紛らわすことができたのだが

食への欲求が強くなってきて、徐々に

『食べれるようになったら…』と考える

ことが多くなってきた。

そこで、ボクは食べれる日がいつか来る

だろうと想定して、クローン病の人が

食べても安全と言われてる食材で調理

したレシピ本を購入し、今後の参考に

しようと考えた。

そこには、、、

【体調不良時には具の無いスープなど…】

と書いている文字に目が留まった。

『ということは、、、具なしの味噌汁を

飲んでもいいんじゃないか…』

と、何とも自分の都合良いように

考えたのだ。

しかし、具なしの味噌汁と言ったって

味噌のカスは無いほうがいいんじゃ

ないか?

そう思い、アクを取るすくい網の

目の細かいものを購入し、極力、

カスを取り除くようにした。

久々に塩味を口にする。

飴は甘いものが多いので、たまには

塩飴とかを買って舐めてはいたのだが、

味噌汁の塩味とは全く違う。

この具なしの味噌汁がまた最高だった。

具なしの味噌汁だけで、空腹感は

なくなり、さらに満足感たっぷりだ。

気になるトイレの回数だが、これまた

まったく変わることがなく1日3回くらい。

具合が悪くなったりという体調不良も

もちろんない。

ボクは徐々に楽しみが増えていった。

起きてからタバコとコーヒー。

もちろん仕事の合間にも吸いたく

なったらタバコを。

そして夜は具なしの味噌汁とエレンタール。

エレンタールは、体重を増やしてくれる

唯一の栄養源だったので、体重が増えて

くると、やりがいが出てきて毎日

エレンタール摂取するのも楽しみの1つ

になっていたのだ。

こうしてボクは、体調が良くなるにつれ

徐々に不良患者への道を歩みだしたので

ある。

ーつづくー

ヒロ田

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