2002年6月24日
ボクは二週間の入院生活を終え、
在宅での栄養療法生活がスタートした。
エレンタール(粉末を溶いて液状にする)
を、1日1,800kcal(1,800ml)分
12時間で摂取する。
1時間あたり150mlを鼻から入れた
チューブを使用して滴下していく。
滴下していくのは、専用のポンプと
言われる機械で行う。
機械は病院からのレンタルだ。
入院中は、点滴スタンドにそのポンプ
と言われる機械を取り付け、点滴の
ようにエレンタールの入った容器を
ぶら下げることで院内を自由に歩く
ことができた。
イメージとしては血管に針が入って
いるか、鼻にチューブが入っているかの
違いだけ。
と言えばわかりやすいだろうか。。。
入院中は、そうやって過ごすことが
できたのだが、問題は自宅ではどう
するか?ということだった。
点滴スタンドのレンタルは無いとのこと
だったし、もし買うとしても医療用だから
買うと高いので買う人はいないとのこと
だった。
ならば、、、
自分で作ろう。
それしかない。
ボクは、午後から時間が空いていたので、
ホームセンターへ向かった。
利用するのはアルミ製(軽いので)の
1.5cm四方のものを使用。
高さを1mに設定。
それを支える足を30cmで4本カットし、
ビスで止めて自作エレンタール台を作成。
これで自宅でのエレンタールでの栄養療法も
困らない。
退院した時のトイレの回数は6~7回と、
入院した時より半分以下に減っていて
身体はずいぶん楽になっていた。
明日からは仕事がスタートする。
一番気になるのはトイレの問題だ。
お客さんに会っているタイミングで
トイレに行きたくなったらどうするか?
そんな要らぬ心配をしてしまうのだが、
考えてもしょうがない。。。
絶食してエレンタールを続けて
トイレの回数が減っていくことに
期待するしかない。
ボクは、そんなことを考えながら
自宅に帰ってきて初のエレンタールを
スタートさせた。
2002年6月25日。
ボクは久しぶりに仕事復帰した。
仕事の話はさておき、ここから約3年間
ボクはエレンタールのみの絶食生活に
入る。
もちろん食べれる日が来るとは
このとき思っていなかったのだが…。
『いつか食べれる日がくれば…』
どこかで食べれる日が来ることを期待は
していた。
でも、入院しているときに女性医師から
『クローン病は食べれない病気と思って
いたほうが良い』と言われたことが
頭から離れていなかったのも事実。
食べれるという気持ちを無くすよう
ボクは腹をくくった。
食への欲求を仕事への欲求に変えて
いったのだ。
幸い、二週間の入院と入院前の一週間、
絶食を続けてきたこと、入院中の点滴で
体調が良くなってきたことにより、
マイナス的な思考は無くなってきていた。
よく『気合で…』なんて言うけれど、
体調不良、体力がなくなると『気合』も
入らないものだ。
絶食してエレンタール生活を続けることで
トイレの回数も徐々に1日3~5回くらいに
なってきて、生活リズムもできてきた。
エレンタールは1,800kcal摂取。
ただエレンタールを摂取していても
空腹感だけ消えることはない。
そのため日々の生活に飴と
100%アップルジュースは欠かせない。
特に甘い飴が空腹感にちょうど良かった
のだが、何せ食べ過ぎると虫歯に
なりそうだ。
なので、食べすぎに注意した。
退院して一ヶ月くらい経ち、トイレの
回数も1日3回くらいになった頃、
エレンタールの摂取量を2,100kcalに
して、さらに2,400kcalまで上げていく
ことを目標にした。
エレンタールも、慣れないと浸透圧の
関係で下痢しやすいと言われてる。
ただボクの場合は慣れてきたし、
トイレの回数も減ってきている。
ここでカロリーアップしたい。
というのも、体重を増やしたい気持ちが
強くなったからだ。
49kgになった体重も、この時52kg
くらいに増えてきていた。
『エレンタールで体重増えていくなんて
凄いな…』
と最初は思ったが、冷静に考えたら
1,800kcal摂取しているのだから当たり前
のことなんだけど。。。
ボクにとっては嬉しい出来事だった。
なぜなら体重を増やしたかったから…。
そこで先ほど言ったカロリー数をアップ
していこう!だ。
2,400kcalというとエレンタールは
8袋の粉末を溶いて2,400ml。
数字にするとすごい量だ。
「食べれないの辛いね…」
とだいたいの人が言う。
確かに考え方によっては食べれないのは
辛いのかもしれないが、腹をくくっていた
ボクは、このとき辛いとは思って
いなかった。
それよりも、エレンタールで体重が増えて
いくこと。そしてトイレに行く回数が
減ってきて、体調が良くなってきている
実感ができて、嬉しい気持ちのほうが強く
なってきていた。
むしろ仕事が終わって自宅に戻り、
エレンタールをする毎日が少し楽しくなって
きていたのである。
体調が良くなってきて困った問題が
1つ出てきた。
それは、一ヶ月以上止めていたタバコが
吸いたくなり、コーヒーも飲みたくなって
きたのだ。
タバコとコーヒーは、クローン病に
良くないと言われている。
わかってはいるのだが、体調が良好に
なるにつれ、その気持ちはどんどん
高まっていくばかりだった。。。
ーつづくー
ヒロ田