第53話 手術後なのに絶食で再びエレンタール

第53話 手術後なのに絶食で再びエレンタール

『今日からご飯が出るのではないか?』

朝の回診時に、食事の話が出ていたことで

ボクは早合点し、今日からでもご飯が出て

来るのではないかと思っていた。

ところが一転、今日の夜からエレンタール

をしていかなければいけなくなった。

それまで『食べれる!』と思っていただ

けに、とてもショックを受けた。

しかし、そんな落ち込んでもいられない。

ボクは、エレンタールのセットをお願い

して自宅から持ってきてもらった。

夜から朝にかけてエレンタールを行う。

いきなり多くのカロリーを摂取するのも

どうかと気になったので、900kcalからの

摂取でどうか看護師さんに聞いた。

看護師さんが医師に確認したところ、点滴

もしているので、まずはそれで始めてくださ

いとのことだった。

ボクはエレンタールの準備をし、20時~

12時間後に終了する予定で、1時間75ml

滴下していくことにした。

『またエレンタールか…』

『でもエレンタールは慣れているし、ただ

の点滴よりは栄養が摂れて良いか…』

そんなことを考えながらエレンタールを

スタートさせる。

1時間くらい経った頃だろうか…。

ものすごく具合が悪くなってきた。

開始後30分くらいで胸やけがしてきたが、

これはエレンタールをやっていると、今まで

も時々あった症状なので無視して続けていた

のだが、1時間くらいして胸やけにプラス

吐き気も伴ってきた。

こうなると鼻から入ってるチューブも

気になって、喉にチューブがくっついている

ことも吐き気につながるため、ボクはナース

コールするのと同時に、自らの判断でチュー

ブを鼻から抜いた。

看護師「ヒロ田さん、どうしました?」

ヒロ田「いや~、すごい具合悪くなってきて

勝手にチューブ外しましたからー」

看護師「うんいいですよ。ところでどうです

今は?」

ヒロ田「とりあえず胸焼けしてる感じです

けど、チューブ抜いてエレンタールを止めた

ので良くなってくると思います。少し様子

みて良くなってきたら再開させてみます」

看護師「じゃあ、何かあったら言ってくだ

さいね」

エレンタールをやっている時、何度かこう

いった感じで具合が悪くなった経験がある。

『今回も久々にやったから、こういった

症状が出てきたのかな…』

『少し休めば大丈夫だろう』

以前も胸焼けして少し具合が悪くなった時、

鼻にチューブを入れたまま、エレンタール

を止めてしばらくすると、具合悪いのは落ち

着いた経験がある。

今回もそれと同じだと考えていた。

ところが、今回は違っていた…。

エレンタール止め、鼻からチューブを抜いて

いるのに、まったく改善しない。

それどころか胸焼けも凄くて吐き気もする。

時間は22時頃。

看護師さんを呼ぼうか、もう少し我慢しよう

か考えている時に、タイミング良く看護師

さんが様子を聞きに来てくれた。

看護師「どうですか?ヒロ田さん」

ヒロ田「止めてからも胸焼けが凄いし、吐き

気もしてる」

看護師「吐き気止めの注射打ちましょうか?」

ヒロ田「そんなんで効きますかね?」

看護師「少しは違うと思いますよ」

ヒロ田「じゃあお願いします」

看護師「わかりました。いま準備してきます

ね」

しばらくして看護師さんが吐き気止めの注射

を持って病室に来た。

幸い点滴をしていたので、新たに針を刺す

必要はなく、その点滴のルートを使用して

吐き気止めの注射をした。

今までエレンタールでこんなに具合悪くなっ

たのは初めてだ。

ボクは吐き気がしていたので、ベッドを起こ

し気味にして、テレビを見ながら具合悪さと

闘っていた。

『ホント具合悪い。これじゃ寝れないな…』

そんなことを思いながら数十分、いや数分

だろうか、徐々に胸焼けや吐き気が治まって

きた。

どうやら吐き気止めが効いてきたようだ。

これまたタイミングを計ったかのように

看護師さんが様子を見に来た。

看護師「ヒロ田さん、どうですか?」

ヒロ田「さっきより楽になってきました」

看護師「あっ、じゃあ効いてきたかもしれ

ないですね」

ヒロ田「すごいですね、吐き気止めの注射

って」

「具合良くなってきたけど、エレン

タールやらなくてもいいですよね?」

「明日またやってみますので…」

看護師「大丈夫です。先生も中止して良い

って言ってたので、明日からにしましょう」

具合が良くなってきたボクは、このあと

朝までグッスリ寝た。

『今日以降もエレンタールで具合悪くなる

ようだったら予定通り退院できないのでは

はいか?』

朝起きてすぐにそんな不安が頭を過る。

朝の回診で外科医が傷口のチェックに来た。

外科医「ヒロ田さん、昨日エレンタール

上手くいかなかったみたいだねー」

ヒロ田「そうなんですよ。それで今日は600

kcalにして、ゆっくり落として慣らしていこ

うかと思ってます」

外科医「うん、そうだね。その辺はヒロ田

さんに任せます。傷口は順調にキレイになっ

ていってるし、このままいけば3日後に退院

は可能なので」

ヒロ田「あっ、そうなんですか」

思わずカレンダーに目をやる。

『12月28日だ。

大晦日は自宅で年越しできるぞ!!」

ボクは俄然やる気が出てきた。

腹腔鏡で手術した場所は、傷口に絆創膏の

ようなものがついている。

『そうだ、抜糸に来なければいけないのかな

?』

ヒロ田「先生、ところで抜糸に来る日って

どれくらい空けてからですか?」

外科医「ヒロ田さん、これね抜糸いらない

の。そのままつけたままにして勝手に剥がれ

てきたらそれで終わりだからこのままで大丈

夫」

ヒロ田「へぇ~、今ってそんな便利になって

るんですかー」

外科医「そうだねー、今はほとんど抜糸する

ことは無いよ」

「あと、この管も必要ないから抜きますね」

お腹に管が入っていた。

手術で体内に残った血とか水のようなもの?

何のためかは良くわからないが、体内から

そういった不要なもの?を抜くために管が

入っていたので、それを抜くと言ってるのだ

が、お腹に入っているので痛いんだろうな…

と思っていた。

ところがまったく痛くない。

『あっ、でも管を抜いたらお腹に小さな穴が

開いたままじゃないか?』

そう思ったのだが、それも絆創膏を貼って

おくだけで大丈夫なようだ。

医療の進歩は凄いものだが、人間の身体の

治癒力というのも凄いものだと改めて思った。

『よし、12月28日に退院できるよう

頑張るぞ!!』

ボクは、外科医から明確な退院日を知らされ、

俄然やる気が出てきたのである。

ーつづくー

ヒロ田

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