第58話 両親と大晦日を過ごし鍋や茶わん蒸しを食す

第58話 両親と大晦日を過ごし鍋や茶わん蒸しを食す

実家のテーブルには、どんどん食べ物が置か

れていく。

『あっ、忘れてた』

茶わん蒸しがテーブルの上に…。

ボクは、茶わん蒸しの存在を忘れていた。

ヒロ田「そういえば茶わん蒸しは食べれる

ねー」

母親「FAXしてもらった紙を見てたら

茶わん蒸しは大丈夫だろうと思って…」

クローン病の安全食と言われる食材を、表に

して母親にFAXしておいたのだが、それを

見て茶わん蒸しは大丈夫だろうと思った

ようだ。

鍋物だけ食べれれば…と思っていたのに、

嬉しいサプライズだ。

母親は料理を作るのが好きで、とにかくたく

さん作って、たくさん食べてもらいたいとい

う気持ちが昔からあったようだ。

それにしてもだ…。

3人で食べるにはちょっと量が多いんじゃな

いか?と思うくらいの料理が出てきた。

ボクに食べれる食材が豊富にあれば、もっと

もっといろんな種類のものが出てきたに違い

ない。

鍋物は、自分で食べれるものだけを選ぶ

ことができるから有難い。

ボクは迷わず豆腐から食べることにした。

その前に汁を飲みたい。

一口飲んでみる。

『あー、母親の味だな…』

何だか久しぶりに母親の手料理を食べれて

嬉しい気持ちになった。

ホント今までは、恥ずかしながら

そんな気持ちになったことはない。

今回、手術することになって、感謝の気持ち

がとても強くなったのである。

退院して3日目ということもあり、話す内容は

入院、手術のことが多かった。

まぁ、暗い感じの話しではなく、初体験のこと

だし、もちろん両親は手術の経験がないから、

麻酔がかかった時の話しとか、麻酔から起こさ

れるときの状況とか…。

そんな話をしていると、あっという間に時間が

過ぎていく。

ご飯を食べ終わり、一時間くらいした頃、

ボクはエレンタールを始める準備をした。

両親は、ボクがエレンタールで栄養を摂取して

いることは知ってはいたが、実際にやっている

ところを見るのは初めてだ。

鼻からチューブを入れて、溶いたエレンタール

を準備して…。

そんなことをやっていると、親といえども何と

なく恥ずかしい気持ちになってきた。

1人でやっていると何とも思っていなかった

エレンタール摂取も、人に見られていると

何だか恥ずかしい気持ちになるものだ。

実家に帰る時、正直悩んだ。

エレンタールを持っていくか、持っていか

ないかを…。

というのも、エレンタールのやってるシーンを

親に見せたくないという気持ちが少なからず

あったからだ。

最終的にエレンタールを持っていき、その姿を

見せることにしたのだが…。

クローン病という病気で、エレンタールを摂取

しなければいけないけど、『オレぜんぜん平気

だよ』という部分を見てほしかった。

暗い気持ちになってないよ…と。

親も、息子が鼻からチューブを入れてエレン

タールを摂取しているのは見たくはなかった

と思うが、ボクが意外にも落ち込まずやって

いるのを見て安心したのか、エレンタールの

ことについていろいろ聞いてきた。

そりゃそうだ。

普通は病院でやるようなことを在宅でやって

いるんだから不思議だと思う。

ボクも最初は不思議に思ってたんだから…。

エレンタールをスタートさせたボクは、テレ

ビを見ながら父親と話をした。

何だか年越しという感じではない。

あまりにも話すことというか、父親の聞いて

くる内容が現実的過ぎて、大晦日というより

も普通の日という感じだったからだ。

父親はお酒を飲んでいたが、以前とは違い

飲まなくなった。

ボクは、クローン病になってからお酒を飲ま

なくなったので、一緒にお酒を飲むことが

できない。

それも父親のお酒が進まない要因の一つかも

しれないが…。

今までゆっくり話すことが無かったから、

話しは次から次へと出てくる。

過去のこと、仕事のこと、病気のこと…。

あと、ボクは離婚していて二人の子供がいる。

その子供たちのこと…。

話はつきなかった。

夜11時近くになった頃、今までの入院生活で

規則正しい生活を送ってきてたからか、急に

眠くなってきた。

ボクは年越しをする前に寝ることにした。

今回の帰省で久々にボクは普通の食事をした。

退院して3日間は雑炊と具なしの味噌汁を食べ、

今回の大晦日で普通の食事だ。

気になる体調は?

夕方、実家に着いて寝るまでにトイレは

2回行った。

便は普通の状態。

トイレの回数はかなり減っている。

寝てからは夜中に2回トイレで起きた。

便の状態は普通なんだけれど、何だかおかし

い。というのも、何だか残っている感じが

してスッキリしないのだ。

トイレから出たくても出れない感じと言えば

いいのだろうか…。

同時に、痔ろうで切開している箇所に何とな

く膿が溜まってきているような感じがする。

『結局は食べたらダメということか…?』

そんな不安が頭をよぎる…。

朝、目覚めると母親が朝食を作っていた。

『あー、何だか懐かしいなー』

白い炊き立てのご飯に鮭、そして目玉焼き。

もうこれで十分だけれど、茶わん蒸しも出て

きた。それに味噌汁。他にもいろいろ出て

きた…。

母親は、どうも量を多く作りたいらしい…。

久々に実家で食べる朝食。

朝からお腹も減っている。

胃だけは健康的な感じだ。

でも、ボクはちょっぴり気になることが

頭の中にあった。

それは、少し膿が溜まってきているような

感じがしていることだ。

ちょっとでも気になることがあると、どうし

ても思いっきり楽しめないものだ。

ボクは実家にいる時くらい考えるのをやめて

親と楽しく会話しよう。

そう思った。

今日は帰る日だ。

遅くとも17時過ぎには実家を出る。

夕食を両親と一緒に食べ、帰る時間が近づい

てくる。

お腹が減ったら…と母親は弁当を持たせてく

れる。

ティッシュにトイレットペーパーもだ。

ホントにありがたい。

トイレに行ったのは夕方までで2回くらいだ

ろうか…。

確かにトイレの回数は少なくなっているし、

便も普通の状態だ。

けれど、どうもスッキリしない。

膿も今のところは出てきてはいないけれど、

何となく溜まっているような感じもする。

実家から自宅までは車で2時間30分くらい。

その間のトイレのことを気にした。

幸いなことにコンビニは途中に何箇所もある

からどうにかなるなと考えた。

あとは、今後のトイレの回数だ。

トイレの回数が増えると、当然、膿も溜まり

やすくなる。

もしトイレの回数が増えていくと、やはり

食事の量を減らすしかないのか…。

そんなことを考えながら実家を後にしたので

ある。

ーつづくー

ヒロ田

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