翌日、IBD専門の医師(以下IBD医師)が
病室に来た。
IBD医師は、看護師さんに伝える前に、患者
に今日やること、今後の治療方針を説明しに
くる先生だ。
そのため看護師さんが説明に来る前にボクら
が知っているということが多く、ほとんど説
明を聞かなくても良い状態になっている。
いつも9時前後に来てくれるのだが、日曜日
も休まず来てくれることには感心する。
今日も同じような時間にやってきた。
「ヒロ田さん、どうですか?」
ヒロ田「トイレの回数はちょっと多いですが、
傷口の痛みはないです。ただ、膿が出る時に
少し痛い感じはあります」
IBD医師「そうなんだねー」
ヒロ田「あと昨日気づいたんですけど、肝心
な膿の溜まってるところが切開されてないよ
うな感じがするんですけど…」
そう言いながら切開してない箇所を見せる。
IBD医師「どれ?あー、ここね。これねー、
ココで切開しなくても他のところでつながっ
てるから、そこから出るように手術してると
思うわー。
一応ね、来週に骨盤のとこのMRI検査をもう
一回やって膿が排膿されてるかどうか確認し
ますから」
ヒロ田「あー、そうなんですね。あと切開す
る場所もココだと目立つ場所だから避けたっ
ていうのもあるんでしょうかね?」
IBD医師「そうそう、それもあるし、やたら
と切ってもねー、意味ないから考えて切って
ると思うよ。とは言っても、膿が排膿されて
なかったら意味ないから、MRIで検査してチ
ェックしましょ。あとは結核がどうかなんだ
よねー。違うとは思うんだけど、ハッキリし
ない限り隔離も解除できないしさ、クローン
病の治療にも入っていけないんだよねー。何
とか痰取れるように頑張って」
IBD医師と話をして、ひとまずスッキリした。
でも、まだ不安な気持ちは消えていない。
外科医も回診に来るので、その時に直接聞い
てみることにした。
10時頃だろうか、外科を担当してくれた医師
が回診にきた。
外科医「どうですヒロ田さん、傷口とか痛ま
ないです?」
ヒロ田「トイレ行ったりして、膿が少し出て
きたりすると少し痛くなったりします」
外科医「あー、ヒリヒリした感じの痛みかな
?」
ヒロ田「そうですね、ヒリヒリした感じです」
外科医「数日したら徐々にヒリヒリした痛さ
はなくなっていくと思うので…」
ヒロ田「あっ、わかりました」
ヒロ田「ところで先生、一番膿が溜まってた
場所は切開してないんですよね?」
そう言いながら、ボクは下着を下げようとす
る行為をした。
外科医「あっ、じゃあちょっと見てみようか」
外科医「あー、ココね」
そう言いながら膿の溜まってる箇所を押す。
ヒロ田「あっ、押したら痛いですね」
外科医「そうでしょ、少しまだ水っぽい感じ
の膿が出てくるね」
ヒロ田「これって、この場所を切開しなくて
も良かったのでしょうか?」
外科医「うん、あのね、ココとココがつなが
っていて、そこから出てくるようにはしたん
です。それでこの目立つところを切開するの
を止めたんだよね。数日したら排膿されてキ
レイになると思うんだけどね」
ヒロ田「わかりました。であれば良かったで
す。きっと先生の考えがあってそうしたんだ
ろうなーと思ってたので…」
外科医「うん、じゃあ後は腸の炎症の治療に
入っていくと思うので、良くなるように頑張
ってくださいね」
ヒロ田「わかりました。ありがとうございま
す」
ボクはIBD医師と外科医の話を聞けたことで
納得できた。
これで痔ろうに関しての心配事はなくなった。
だが、次なる心配事があった。
それは…
① 検査に出すための痰が取れないこと。
② それに伴い、退院が遅れるのではないか?
ということだ。
というのも二週間の入院という予定で、ボク
は周りの仕事関係者に伝えていた。
なので、退院翌日から予定が入っていた。
だからどうしても退院できるようにしたい。
にもかかわらず痰を取ることができない。
隔離されてから4日目に突入した。
IBD医師と打ち合わせをする。
鼻に入れてたチューブを利用して胃液を取っ
て検査に出したが、上手く取れなかったため
ちゃんとした検査結果が出なかった。
それ以外に痰を取る方法は、気管支鏡を使っ
て検査する方法があるとのこと。
そのためには、呼吸器科の先生に診てもらう
必要があるので今日の午後から呼吸器科の外
来で診察してもらおうということになった。
ボクは、早く退院したいこともあり、早くク
ローン病の治療に入っていきたいと考えてい
たから焦っていた。
しかし、その午後になっても呼ばれない。
『午後って13時30分過ぎてからなのか…?』
焦りのせいか、昼の12時を過ぎたら午後と
思っていたボクには待っている時間が物凄く
長く感じる。
13時にも呼ばれない。
13時30分過ぎても…。
『14時になったぞ…』
テレビを見ようと思ったり、本を読もうと
思ったりしても落ち着かないから何もできな
い自分がいる。
ベッドに横になりながら、今後のクローン病
の治療、退院後の仕事のこと、『気管支鏡を
使ってってどんなことするんだ…?』など、
これから起きるであろうことを想像すること
しかできなかったのである。
ーつづくー
ヒロ田