病院の洗面所で、鼻にチューブを無事に
入れ終えたボクは、2人の看護師さんと
病室に戻ってきた。
次は、エレンタールを一定の速度で滴下
してくれる機械(ポンプと言われてる)
の使い方を看護師さんに聞く。
まずは1時間で何ml滴下するかの設定だ。
今回は、600kcal(600ml)を12時間で
滴下するので、1時間50ml滴下する計算。
機械(ポンプ)を50mlにセットしスタート。
これでエレンタールが自動的に摂取できる。
※いま使ってるポンプ
チューブを通って、直接、十二指腸(胃に
滴下されてるかもしれないが…)に
滴下されるため、不味いということを
感じることが無い。
エレンタールを飲むことができなかった
ボクにとってはありがたい。
看護師「明日もヒロ田さん1人でできる
ようなら、予定通り退院できるかも」
そんな言葉をかけてくれた。
そんな言葉に俄然やる気が出てきた。
『よし、明日も絶対決めるぞ!』
チューブを自分で入れることができなく、
1週間、看護師さんに入れてもらうという
ケースも少なくないようだ。
自分で入れれないと退院が延びる。
『絶対1週間後に退院しよう』
ボクは改めて心に誓った。
エレンタールでの栄養療法をスタート
させたボクは、毎朝8時30分に一時外出。
自宅に寄ってシャワーを浴び、10時に
自分がやっているお店を開け、12時に
ビジネスパートナーと交代。
まっすぐ病院へ戻る。
それを繰り返す毎日が始まった。
体重は49kgと相変わらず増えないし、
体力もない。
だがエレンタールでの栄養療法が何事もなく
スムーズにいってるため、退院日を待つだけ
の状態だったから心は晴れやかだ。
毎朝の検温も36度5分くらいの平熱を
キープし、あれだけ痛かった膝や踝も
腫れが引き、普通の状態になっている。
完全に体調が回復したわけではないけれど
入院前からすると、かなりの回復ぶりだ。
回復してくると人間の身体は正直なものだ。
お腹が減ってきたのである。
今までは体調が悪かったからか、食欲がなく
空腹感というものが幸いにもなかった。
ところが、体調が良くなってくると、
その空腹感というものが出てきた。
『何か食べたい』
『でも食べれないんだよなー。。。』
そんなことを1日に何度も思うようになる。
飴やガムは食べても大丈夫だったので、
飴を食べて空腹感を紛らわした。
甘い飴は特に空腹感がまぎれる。
ボクは黒糖の飴を好んで食べた。
しかし、その飴も食べ過ぎると大変な
ことになる。
鏡で歯をよく見てみると、歯間に砂糖が
ついている。
歯を磨いているにもかかわらず。。。
さらに、何となく歯が痛いような気が
してきた。
『空腹感まぎれていいけど、これじゃ
虫歯になってしまうかも…
少し減らさなければ…』
空腹感紛らわしたはいいが、今度は大量の
虫歯ができてしまったらどうしようもない。
『仕方ないなー、、、
飴の量を減らそう。。。』
エレンタールでの栄養療法は順調にいき、
入院してちょうど二週間の6月24日。
退院する日がやってきた。
朝からバタバタと慌ただしい。
なぜなら、自宅でエレンタールでの
栄養療法を行うために必要なポンプ
と言われている機械を借りる手続き、
それに使用する物品(テープやチューブ、
消毒液…など)、エレンタールが1日6袋
(1,800kcal分)を一ヶ月分、そして薬も
一ヶ月分の処方。
次から次へと病室に運ばれてくる。
『一ヶ月分でこんな量になるのか…』
エレンタールが14袋で1梱包。
その1梱包が4つ入って1箱の段ボール。
それが3箱ちょっとある。
入院しているときは特に気にもして
いなかった問題だ。
『自宅に置くスペースも作らなきゃな…』
痩せて体力が無くなっているボクには
運ぶのも大変そうだ。
しかし、そんなことは言ってられない。
テキパキと帰りの準備をする。
そのほか退院してすぐにやらなければ
いけないことが特定疾患の手続きを
することだ。
クローン病は難病指定。
退院した足で役所に行き、特定疾患の
申請をする必要があった。
いや、別にゆっくりでもいいのかも
しれないが、仕事をし始めると、なかなか
行くこともできないし、こういうのは
早めに手続きしておいたほうが良いと
考え、退院してまっすぐ手続きに行こう
と決めた。
入院にかかった費用は一時的に立て替えて
特定疾患の申請が通れば、その入院費用が
戻ってくるということなので、それも
早く行ったほうが良いと判断した理由の
1つだ。
10時頃退院してまっすぐ役所へ。
申請がスムーズにできたため午後から
時間が空く。
店に出ることもできたのだが、退院した
ばかりだったので、自宅に帰り今日一日
ゆっくりすることにした。
久々の自宅は良いものだ。
病院と違いのんびりできる。
ただ、今日から医療関係者が近くに
いないなかエレンタールでの栄養療法を
やっていかなければいけない。
少し不安な気持ちを持ちながら
自宅での夜を迎えたのである。
ーつづくー
ヒロ田