第134話 人工肛門(ストーマ)にすると決断した日

第134話 人工肛門(ストーマ)にすると決断した日

2016年1月になってから、ボクの体調は益々

悪化してきた。

トイレの回数は一日に40回以上行く。

こうなると、ほぼほぼトイレは間に合わない。

毎回オムツの中にお漏らしする状態だ。

ほんのちょっとしか出ないのに、それでも便

意を感じるのでトイレに行く。

だが、少ししか出ない。

もうこんな少量でトイレに向かうのも面倒に

なってくる。

トイレに行って部屋に戻ってきてから、座る

か横になるかの状態でテレビを見る。

いまトイレに行ってきたばかりなのに、また

便意を催しトイレに向かう。

やはり少ししか出ない…。

こんな状態であれば、正直オムツの中にお漏

らししたほうが楽である。

そう思い、トイレから戻りテレビを見て便意

を感じると、『どうせまた…』とトイレに行

かず、お漏らし大歓迎と言わんばかりにドッ

シリ座りテレビを見ている。

すると、今度は量が多くてオムツの内股ギャ

ザーから外に漏れだしそうになり、慌ててト

イレに向かったり…。

こんな状態が一ヶ月は続いた。

さすがにこうなるとメンタルがやられてくる。

余計引きこもりがちになってきた。

だが、『仕事だけは行かなければ…』と、変

な所で日本人的な真面目さが出てしまい、休

むことなく仕事には行っていた。

オムツの替えを3枚くらい常に持ち歩き、快

適パッドなるものは5枚ほど鞄に入れ、トイ

レがどこにあるか、トイレまで今の場所から

どれくらいの時間がかかるのか…。

そんなことを常に考えていた。

頭の中はトイレのこととクローン病の状態を

どう良くしていくか…?

そんなことばかりだ。

夜中寝ている時も【漏れ】が心配で熟睡でき

ない。

ボクは肉体的にも精神的にも疲れていた。

そんなある夜、ボクは無意識に【人工肛門

ストーマ】と検索していた。

人工肛門(ストーマ)について調べ始めたの

である。

あれだけ人工肛門(ストーマ)にしたくない

と思っていたのに、情報収集し始めていた。

『人工肛門にして、臭ったりしないか…?』

『テープ負けしやすいけど、人工肛門にな

って皮膚がかぶれたりしたらどうなるんだ?』

『銭湯や温泉には行けないよな…?』

『人工肛門になると障害者ってことか…?』

『ズボンはスキニーパンツなんか穿けないよ

な…?』

人工肛門(ストーマ)にすることで、どんな

メリットがあり、どんなデメリットがあるの

か、時間があればスマホで検索する毎日。

同時にトイレの回数も多いから、お漏らしす

る回数も増えてきた。

酷い時は一日に3回漏らしてしまうことがあ

った。

夜中寝ている時にも何度か漏らしたことがあ

る。

夜中の静かな時間に惨めな気分だ…。

悲しい気持ちでシャワーを浴びる。

そんなある日、ボクは両親にこう話した。

「人工肛門にしようと思ってる。今まで良い

人生を過ごしてきた。それなりのことはやっ

てきたし悔いのない人生だった。今の状態で

いても、気力も体力もなくなり、衰弱して死

を待つのみだ。それであれば、一度死んだと

思って、人工肛門にして新しい人生を歩むこ

とにする」と…。

両親も、人工肛門にすることに大歓迎だった。

無理もない。

ボクが一日に何度もトイレに行くことを知っ

ていたし、腸が悪くて栄養が摂れなくなり、

衰弱していってるのもわかっていたからだ。

人工肛門にする!

そう決めたら気持ちが楽になってきた。

2016年3月9日。

ボクは病院の診察室にいた。

いつものように採血結果を主治医に聞く。

主治医「う~ん、良いとは言えない数字だね」

ヒロ田「そうですね。それで、先生もし人工

肛門にするとなったら、一ヶ月くらい入院す

れば手術して退院できますかね?」

主治医「そうだねー。一ヶ月もあれば大丈夫

だと思うなー」

ヒロ田「もうこれ以上良くならないと思って

て、それなら人工肛門にしようかと思ってる

んです」

主治医「そうだねー。そうしたほうが身体も

楽だし、絶対いいと思うよ。痔ろうもあるか

らさー、痔ろうガンも怖いし…。」

ヒロ田「そうなんですよね。ただ、気になっ

てるのは臭いが出ないか?ということと、肌

が弱いのでテープ負けした時にどうなるのか

?と思ってるんですよー。肛門が残ってれば

オムツつけたりできますけど、人工肛門だっ

たら皮膚が荒れたのでオムツってわけにはい

きませんしね…」

主治医「あー、まず臭いはね、大昔と違って

臭わなくなってきてるし、それでも気になる

ようなら袋の中に入れる消臭剤もあるし問題

ないよ。それと肌荒れはねー、WOC(ウォッ

ク)の専門看護師がいて、どんな状態になっ

ても解決法があるから、そこは気にすること

ないわー」

ヒロ田「そうなんですね。それでいつだった

ら入院可能ですか?一週間後とかですか?」

主治医「あー、それはちょっと早いね。ちょ

っとベッドの空きとかも関係あるし、すぐす

ぐはちょっときついと思うな」

ヒロ田「二週間後の3月23日はどうですか?」

主治医「あー、それくらいならいいかもね」

ヒロ田「じゃあ3月23日に入院して4月末くら

いまでの予定で考えておけばいいですね?」

主治医「そうだねー。じゃあそれで入院の予

約入れておくね」

ヒロ田「お願いします」

こうしてボクは人工肛門(ストーマ)になる

ことを決めたのである。

ーつづくー

ヒロ田

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