人生二度目の胃カメラの日がやってきた。
過去に一度だけ胃カメラ検査をしたことが
ある。
とても苦しかったという記憶だけが
残っていた。
そのため胃カメラはボクの中では
嫌な検査に入っていたのだが、
そうはいってもその嫌な検査が、
数時間後に行われるわけだ。
ボクの検査時間は11時~11時30分頃
を予定しているとのことだ。
その時間をテレビを見ながら待っている。
テレビといったってついてるだけで
内容なんて覚えていない。
「ポーン」
スピーカーの音が鳴った。
「ヒロ田さん、胃カメラの準備ができた
ので内視鏡室へお願いします」
ボクのベッドのスピーカーからだった。
ボクは「わかりました」と返事をし、
重たい腰をあげ、内視鏡室へと向かった。
内視鏡室につくと、、、
すぐに看護師さんが処置室へと誘導する。
看護師「ヒロ田さん、胃カメラしたこと
あります?」
ボク 「はい、1回だけあります」
看護師「どうでした?」
ボク 「いやー、もう苦しかった記憶しか
ないです」
看護師「そうなんですね。
でも先生は胃カメラ上手いから
大丈夫です」
ボクの主治医が検査するようだ。
どうやら胃カメラや大腸カメラの検査が
上手いらしい。
検査好きとのことだから、必然と上手く
なったのか…?
ボク 「あー、そうなんですね」
そうは答えたものの、不安な気持ちに
変わりはない。。。
看護師さんが手際よく喉の麻酔など
検査前の処置をやっている。
看護師「はい、じゃあヒロ田さんベッド
に移動しますよ」
ボクは検査室のベッドへと移動する。
看護師「じゃあヒロ田さん、ここに左側を
下にして横になってくださいね」
そう言いながら看護師さんが検査の
準備をする。
準備をしていると主治医が登場した。
医師「ヒロ田さんて胃カメラしたこと
あるんだっけ?」
ボク「はい、一度だけあります。
ただ、苦しかった記憶しかないので
お手柔らかにお願いします」
もうドキドキを紛らわすために
そう言うのが精いっぱいだった。
医師「あっ、そしたら寝ながらやるかい?」
ボク「えっ、寝ながらできるんですか?」
医師「うん、できるよ。たぶん寝ている
うちに検査が終わるから苦しく
ないと思うよ」
ボク「寝ながらできるなら、それで
お願いします!!」
ボクは苦しくないという言葉を聞き、
少し明るい気持ちになってきた。
医師が看護師さんに寝る注射の準備を
するよう伝える。
看護師「ヒロ田さん、それじゃマウス
ピースをこちらに換えますので
一回頭をあげてもらえますか?」
どうやら通常のマウスピース(胃カメラが
入るように穴が開いてる)を銜えている
だけだと、寝ているときに落ちる可能性が
あるようで、それを防止するためマウス
ピースにベルトのようなものがついて
いて、頭で固定するようなものだった。
看護師「それじゃヒロ田さん、眠くなる
注射打っていきますねー。
ちょっと針先ビリビリしますよ」
ボク 「わかりました」
そう言って注射をし始めた。
医師「じゃあ始めるよ」
『えっ、先生オレまだ寝てないんだけど…
寝てから検査じゃないの?』
そう心の中で思った。
医師『それじゃあ深呼吸して。
ゆっくりね、吸って、吐いてー」
胃カメラがマウスピース直前まで来ている。
『あ~、、、寝る前に入ってくるのか…』
そう思った瞬間からボクは記憶が無い。
途中、目が覚めた。
『うわ、起きちゃったよオレ』
その記憶はハッキリある。
そして検査中だったことも覚えている。
でも苦しくない。
おそらく起きていた時間は、ほんの数秒
だったのだろうと思われる。
「ヒロ田さん、終わりましたよー」
看護師さんの声で起こされ、
ボクは目を覚ました。
すぐに立ち上がろうとしたが、
「まだ、お薬が効いているので、ゆっくり
起き上がってくださいね」
「いま病棟の看護師さんが車いすで迎えに
きますので」
そう内視鏡室の看護師さんが言う。
自分では歩いて帰れそうだと思ったのだが、
車いすで移動しなければいけないようだ。
歩けるのに車いすで、しかも押してもらう
なんて申し訳ないな。。。
と思っていたのだが、車いすで移動
しなければいけない理由がすぐにわかった。
なぜなら、病棟の看護師さんに車いすを
押してもらい、話しながら病室に戻って
いるのだけれど、途中、眠気で記憶が
無くなっている。
気づけば病室に戻ってきていた。
その後、ボクはベッドで一時間くらい爆睡。
目を覚ましたボクは、苦痛だと思っていた
検査がすべて終わったという安堵感からか
気持ちがスッキリしていた。
そして辛いと思っていた注腸バリウム、
胃カメラを振り返ってみる。
人間、経験したことのないものは、
どうしたって不安を感じるし緊張もする。
しかし、経験することで不安もなくなり
度胸もつくようになるような気がした。
明日以降は、楽な検査ばかりだ。
ーつづくー
ヒロ田