「ヒロ田さん、おはようございます。
採血していきますねー」
そう言いながら看護師さんが病室に入って
きた。
2016年4月30日、ストーマ手術後2日目の
朝が来た。
昨日はベッドから出て病室内を歩けるように
なり、水分摂取もOKとなった。
傷口の痛みも無く、あの辛かった便意も今は
すっかりなくなった。
実に気分の良い朝だ。
看護師「ヒロ田さん、採血終わりました」
「それで、今日からこの痛み止めを朝と晩で
飲んでいただけますか」
そう言って痛み止めの薬を差し出した。
ヒロ田「あっ、痛み止め飲むんですね」
「ゼンゼン痛くないんですけどね…(笑)」
看護師「そうなんですよね、今までは点滴に
痛み止めが入ってたからだと思うんです(笑)」
ヒロ田「あっ、やっぱり痛み止め使ってる
んですよねー。ゼンゼン痛くないなと思って
たので…(苦笑)」
看護師「そうなんです」
「それで、ヒロ田さん水分摂取できるように
なったので、今日から飲み薬に代わるんです
よねー」
ヒロ田「わかりました。じゃあこのあと朝の
分は飲みますね」
看護師「はい、お願いします」
採血を終え、薬をもらったボクは、まず病室
内の洗面台で歯を磨き、洗顔などを済ませる。
気分はとても良い。
けれど、手術後2日目だ。
身体には管(ドレーン)が何本かついている。
ボクの場合は、お腹のところとお尻のあたり
に1本ずつ入っているようだ。
お尻はガーゼで固定されていてどうなってい
るのか?
どのあたりにあるのかさっぱりわからないが、
医師や看護師さんが定期的に確認していく。
ドレーンの先についている小さな袋の中身を
見ては、「うん、いいですね。順調です」
そう言って病室を出ていく。
当然のことながらボクは何が良い状態なのか
わからないのだが…。
あとはオシッコの管だ。
これは手術の麻酔がかかった時に処置されて
いるので痛みも何もない。
尿道に管が入っていても特に違和感はないの
で、入ったままでもまったく問題ないが、歩け
るようになってくると、できれば管は抜いてほ
しいというのが本音だ。
でも、まだ病室内から出ることができない
ので残念ながら管とは暫くお付き合いが必要
のようだ。
「ヒロ田さん、おはようございます」
ベッドで横になり、いろんなことを考えてい
ると看護師さんが入ってきた。
ヒロ田「おはようございます」
看護師「体調は変わらないですか?」
ヒロ田「ゼンゼン問題ないです。痛くもない
ですし」
看護師「良かったです。検温と血圧測って
いきますね」
ヒロ田「お願いします」
看護師「あれ、ヒロ田さんてスポーツとか
してましたっけ?」
ヒロ田「えっ?スポーツって学生の頃ですか?」
看護師「今まで心拍数のことで何か言われた
ことありますか?」
ヒロ田「いえ、特にないですけど、何かありま
した?」
看護師「脈拍数が40くらいなんですよ」
ヒロ田「えっ?40って少ないんでしたっけ?」
看護師「そうですねー。だいたい60~70く
らいはあるので…」
ヒロ田「あっ、そうですよねー。いつも60と
か70とかだったと思いますけど…」
看護師「いや、それでスポーツやってた人って
遅い人いるのでヒロ田さんもやってたのかなー
と思って聞いてみたんです」
ヒロ田「やってはいましたけど、今まで脈拍
が低いって言われたことないですねー」
看護師「そうですよねー。ちょっと先生に伝えて
おきますね」
そう言って病室を後にした。
『なんでだ?今まで脈拍がそんなに下がった
ことなんてないぞ…』
『手術してからということか…?』
『これどうなるんだ?また入院延びるのか…?』
『本当は4月末に退院している予定だったぞ…』
『それが4月末に手術だったからなー…』
『あと2週間くらいは入院が必要になるだろう
し…』
『でも脈拍がおかしいってことで入院がもっと
延びてしまうのか…?』
気分良い朝から一転、暗い気持ちになってきた…。
「ヒロ田さん、脈拍が低いって聞いたんです
けど…」
そう言って外科医が病室に来た。
ヒロ田「なんかそうみたいですね」
外科医「それでボクらも何で脈拍数が低い
のか原因がわからないので、循環器の先生に
診てもらおうと思ってますからー」
ヒロ田「あっ、そうなんですか」
外科医「今もう来ると思いますので」
「それまでちょっと傷口とか確認させてもらい
ますね」
そう言ってガーゼのついた箇所を捲って確認
している。
「失礼します」
そう言って循環器の医師が入ってきた。
循環器医師「脈拍が低いって聞いたんですけ
ど…」
外科医 「そうなんです。40とか37とかなん
ですよねー」
循環器医師「そうですかー」
「ヒロ田さん、体調はどうですか?胸が苦しい
とかあります?」
ヒロ田「いえ、まったくないです。いつもと
変わらない感じなんですけどねー」
循環器医師「今まで脈拍って低いとか言われた
ことあります?どこかの病院で…」
ヒロ田「いえ、まったくないですねー」
循環器医師「そうですかー」
循環器医師「体調悪くないんだったらこのまま
様子見で大丈夫だと思いますよ」
外科医 「あっ、そうですか」
循環器医師「そうですねー。これで体調悪いっ
ていうんだったら検査したほうがいいと思う
んですけど、特に体調も悪くないようだし、
顔色もいいし問題ないと思いますよ」
外科医 「心電図はつけといたほうがいいです
ね?」
循環器科医師「そうですね、モニター心電図
つけて数日チェックしていきましょうか」
外科医 「わかりました。ありがとうございます」
外科医「じゃあヒロ田さん、後で心電図つけに
きますね」
ヒロ田「あっ、わかりました」
痛くもないし体調は良好なほうだと思っていた
が、手術後2日目にモニター心電図をつけること
になったのである。
ーつづくー
ヒロ田