2016年3月30日。
入院八日目の朝がきた。
昨日の胃カメラ検査は、鼻からやっているに
もかかわらず、今までやった鼻からの胃カメ
ラで一番辛かった。
そんな検査も、辛いと思われる検査は昨日の
胃カメラで終了のようだ。
そして入院八日目の今日の検査は、呼吸器検
査。
手術前の肺機能検査だ。
全身麻酔の手術で、手術に耐えれる肺機能が
あるかどうかを目的とした検査。
前回の大腸バイパス手術の時にもやった記憶
がある。
しかし、どんなことをやったかハッキリ覚え
ていない。
肺活量の検査をするようなイメージだった記
憶だけはある。
どちらにしても辛い検査ではなかったはずだ。
今回も検査自体に不安なことは何一つない。
ただ、検査中に便意を感じ、お漏らしするこ
とになったらどうしようか…。ということだ
けが気になっている。
この時の状況は、便意を感じた瞬間にお漏ら
しする感じだった。
なので我慢したくてもできないというのが現
状だ。
そのため検査前には便意がなくてもトイレに
行き、用を足しておく。
検査の時間が短ければお漏らしせずに済む。
最悪少し漏れたとしても検査時間が短ければ
終わり次第トイレに行くことができる。
ボクは、検査時間が長くならないよう祈るこ
としかできなかった。
「ヒロ田さん、肺機能検査に呼ばれましたー」
いつものように看護師さんが呼びに来た。
時計は9時45分を指していた。
車イスで検査室へ移動。
ボクと同じように手術する人が何人か検査を
受けている。
「もっと吸って、吸って、吸って、吸って…」
「はい、吐いて、吐いて、まだまだまだまだ、
ここ頑張ってー…」
そう言ってる女性の声が聞こえてきた。
聞きたくなくても検査室中に響き渡るくらい
大きい声で言ってるもんだから、嫌でも聞こ
えてくる。
『うわー、吸って吐いてだけの検査だけど、
けっこう辛そうだぞ…』
『オレ、息続くのかな…』
検査待ちをしていると、急に不安になってき
た。
「ヒロ田さーん、どうぞー」
検査している技師さんは3人いたが、女性2人、
男性1人だった。
ボクは女性の技師さんに当たった。
検査技師「まず、これを咥えてもらって、私
が吸ってとか吐いてと言いますので、それに
合わせて吸ったり吐いたりしてくださいね」
ヒロ田「わかりました」
機械から出ているホースの先にマウスピース
がついていてそれを咥える。
検査技師「それじゃいきますよー。はい、吸
って、吐いて吐いて吐いて、まだまだまだ…」
ちょっと後半は息が切れてきたけれど辛くは
ない。
こんなことを5回くらいやった。
検査自体は数分で終わり。
検査をしてくれたのは女性の技師さんだった
が、ボクを担当してくれた方は、まだ優しく
声かけしてくれる人で良かった。
病室を出てから戻ってくるまで30分しかかか
っていないので、大きな漏れにならず済んだ。
辛い検査が終わると一気にやることが無くな
る。
あとは手術を待つのみだ。
入院九日目も十日目も、その次の日も…。
検査も何もない日が続き、入院十三日目の
4月4日。
朝方4時頃だろうか。
トイレに行きたくなり起きたのだが、ベッド
から出ると寒い。
『あー、やっぱり朝方は寒いな。久しぶりに
気温下がってるんじゃないか…』
そんなことを思いながら用を足し、ベッドに
戻ってくる。
布団を肩まで掛けて寝たが、それでも寒い。
『今日はけっこう気温低いんだな…』
そんなことを思いながらウトウトしていたが、
寒くて目が覚めた。
時間は5時30分過ぎだ。
『それにしても寒いな。布団掛けてるのに寒
いなんて外はよっぽど冷えてるんだな…』
だが、どんなことをしたって寒気は止まらな
い。
『えっ?もしかして熱出てるの…?』
ボクは体温計を取り、熱を測ってみる。
【38.1℃】
『えっ?38.1℃?』
『まさか熱が出ての寒気なのか…?』
ボクは改めて熱を測った。
【38.1℃】
『えー、この寒さは熱が出て寒いんだ…』
『でも何でだ?』
『あれ、もしかしてIVHのカテーテルで感染
した?』
ボクはIVHのカテーテルが原因だと考えた。
というのも、もう取ってしまっていたが、
MRIポートを入れてた時も感染症でポートを
抜去したことがあったので、すぐに感染症だ
と気づいた。
時間はちょうど朝の6時になっていた。
看護師「ヒロ田さん、おはようございます」
ヒロ田「あっ、おはようございます。いやー
熱出ちゃいましたー」
看護師「えー?熱ですかー?」
ヒロ田「いま少し前に測ったら38.1℃でした。
おそらくIVHでの感染かと思います」
看護師「あらー、それは大変。ちょっと先生
に言いますね。いま解熱剤も持ってきますか
らー」
ヒロ田「あっ、それじゃー寒気するので布団
1枚持って来てもらってもいいですか?」
看護師「あっ、わかりました。電気毛布とか
もありますけど要りますか?」
ヒロ田「いやー、電気毛布まではいらないで
す」
看護師「頭は冷やさなくても大丈夫ですか?」
ヒロ田「あっ、大丈夫です」
看護師「わかりました。じゃあちょっと解熱
剤準備してきますね」
なんと、なんと入院十三日目に熱が出てしま
ったのである。
ーつづくー
ヒロ田